オケラだって生きている ー忘れられつつある芸達者ー

2018年8月30日 ALL生物

オケラってどんな生き物かわかりますか。
この生き物、誰もが知っている、あの歌のおかげで名前は知っているけれど、見たことある人は、あんまりいないと思います。私は、小学生の頃、毎日のように川と田んぼで生き物を探して遊ぶ日々でしたが、オケラに出会ったことは一度もありませんでした。それから20年ほどたった7月初めの夜、街なかにあるマンションの自転車置場で初めて彼に出会いました。逃げられちゃいかんと、すかさず捕獲。大捕物劇は一切なくすんなりとビニール袋に入ってくれました。今回は、知る人ぞ知る器用貧乏、オケラについてです。

オケラとは?

正式には、ケラという名前であり、バッタ目キリギリス亜目コオロギ上科ケラ科に分類される昆虫で日本にいるケラ科の仲間は、Gryllotalpa orientalis 一種のみです。大きさは3cmほどであり、北海道から沖縄まで日本全国に生息しています。

オケラの特徴

英語でmole cricketつまりモグラコオロギという名がついている通り、前足は、土を掘るために、特化した構造になっており、モグラを連想させます。

オケラ

オケラの前足

汚れがつきにくいようにビロードのような細かい毛に覆われているのも、モグラそっくりです。また、頭はエビに似ているとも言われます。

オケラ

オケラの顔

確かに言われてみれば、つぶらな瞳とそれに続く胸はエビのようです。腹はやや羽の短いコオロギのようです。オケラ1手の中に包んでも刺したり噛んだりするようなものは持っていないので、手の隙間から抜け出そうとゴソゴソと動いているのが感じられるだけです。どことなく、鈍くさい動きが一生懸命に見える愛らしい生き物です。

多芸なオケラ

オケラの凄いところはなんといっても、多芸。彼らの多芸を紹介します。

  1. 羽があり空を飛ぶことができます。街中のマンションに現れたのもきっと、街灯の光に吸い寄せられて飛んできたのでしょう。
  2. 陸上を普通に歩けます。ただし、そんなに速くありませんが・・・私にもすぐに捕まえられました。地上にいると鳥の餌食になることも多いそうです。
  3. 水面を移動できます。水に入れてみると、毛の撥水性のためか、全く沈みません。しかも、移動が速い。地上より速いかもしれません。
  4. 土を掘れます。普段は、穴を堀り、地中で暮らしているようです。基本的には土中で生活をしているため、あまりお目にかかることがないようです。
  5. なんでも食べます。雑食性で、植物性のものから、肉性のものまでかなり幅広い食性を持っているようです。この食性の幅の広さが沖縄から北海道まで分布できている要因の一つかもしれません。ときには芝の根や米の種用の籾を食べてしまったりして害虫にもなるようです。
  6. 鳴きます。雄は、土中で羽をこすり合わせ、結構大音量で鳴きます。

恋人でもこんなにたくさん褒めるところを探すのは大変です。張り合えるとしたら2と5くらいでしょうか。なんでもできることから、”オケラの七つ芸”という言葉があるようです。いろいろ出来すぎて、結局何も極められない、つまり器用貧乏という意味のようです。せっかくいろいろできるのに、なんだか残念な表現ですね。

身近ではなくなったオケラ

稲作を行ってきた日本人にとって良くも悪くも昔は身近な存在であったはずのオケラですが、近年は、レッドデータブックで要注意種になっている地域もあり、生息数は減少しているようです。なんでも食べられ、飛翔能力もあり、もともと日本全国に分布することから、日本全域から絶滅することは、考えにくいかもしれませんが、こんな面白い生き物が日本にいるということを、今の日本の子供たちの多くが知らないということが残念でなりません。


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