人を利用して生きるサルの驚異的な能力

2018年10月21日 ALL生物

早朝のカンボジア、アンコールワット。まだ観光客も少ない時間です。

遺跡を歩くサル

このオスのカニクイザル、ペットボトルを持った女性の観光客のところに直線的に向かいました。

ペットボトルをもった女性に近づくサル

女性の元に行くやいなや、手に持っていたペットボトルをはたき落としました。

自分でペットボトルの蓋を難なく開けると、

グビグビと中の水を飲み干しました。

このサルは、大きな声をあげて威嚇することもなく、終始淡々と落ち着き払って、水を飲むという目的を達成して去っていきました。

去るサル

あたりに響いたのは、女性観光客の驚いた悲鳴だけでした。

アンコールワット内では原則飲食禁止です。水分補給だけが認められているため、観光客が手に持っているものはたいてい水くらいのものです。撮影した季節は雨期であったため、雨もよく降っていましたのでサルが飲める水なら、簡単に手に入るはずです。このサルは、あわよくばジュースをと狙った可能性もありますがが、もしかしたらただ、美味しい水を手に入れるためだけに、観光客を狙ったのかもしれません。終始落ち着いた行動から察するに、観光客から食べ物を奪うことに、このサルは慣れているようです。そのため、物を奪うコストは非常に小さいことが想定されます。彼は、観光客が、そうそう反撃してこないことをよく知っており、ほとんど警戒するコストすら払っていないのです。

また、人に教えられたわけでもないはずなのに、このサルは、ペットボトルの蓋の開け方を知っていました。自分のグループのサルが1頭でもなにか有用な方法を身につけると、そのグループの多くのサルが、見よう見まねでその方法を学習し、同じようなことができるようになるということが、日本の幸島のサルの集団で観察されています。幸島のある一頭のメスザルが芋を海水で洗ってから食べるという食べ方を始めたところ、その集団の多くのサルが同じような行動をするようになったという観察結果です。つまり、このペットボトルの蓋を開けるという技術は、このサルだけにとどまらず、グループ内で伝えられ、共有されうるということです。また、何か液体の入った器を持ち上げて、液体を喉に流し込むという動作も、野生では滅多にない動作です(参考: ネコの上品?な水の飲み方とイヌの豪快?な水の飲み方)。1頭のサルが生涯に習得できる技術は少ないかもしれませんが、個々のサルが習得した技術がグループ内で共有され、また後世にも伝えられることによって、ヒトと直接関わらない生活をしているサルでは考えられない行動をとるサルが、出現するようになるのです。

人のお菓子を奪って食べるサル

こちらは、停車中のトゥクトゥクに置いてあったカバンの中からお菓子を見つけ出し、食べるミャンマーのカニクイザル。人のカバンの中には、よく食べ物が入っていることを学習済みなのでしょう。

ちなみに、チンパンジーやゴリラなどの類人猿ではそうでもないらしいのですが、サルの仲間の多くは、見つめる=敵意があると判断すると言われています。

シロテテナガザル

動物園で、類人猿のシロテテナガザルは、こちらが見つめていてもご機嫌に食べ物を食べていましたが、

ブタオザル

ブタオザルはなんだか険悪な感じに。。。

こちらがどんなに可愛らしいなと友好的に微笑んで見つめても、相手は、「なにガンつけとんじゃ!」と威嚇してきます。見つめなければ大丈夫だろうと、カメラを構えても彼らにとっては同じことのようです。可愛いからと餌をやりたがる人もいます。人にとって、何か物をあげることは友好の印になったりしますが、サルにその気持ちは伝わりません。基本的にサルの社会では、ものを他人から奪うことはあっても与えることはありません。それはたとえ母子の間であってもあてはまります。母親は、子供から食べ物を奪われることを許容はしますが、自ら手渡すことはほとんどありません。そのため、人がどれだけ友好的にサルに餌を与えたとしても、サルからしてみれば、それはもらったのではなく、奪い取っただけなのです。つまり、人が友好的に餌をもって近づいたとしても、サルは奪い取るために攻撃を仕掛けてくることさえあるということです。「きびだんご」は、サルには通用しないのです。

ブタオザルの歯

サルは主に果実を食べる種が多いにもかかわらず、意外と犬歯が発達しています。噛まれるとかなり深い傷を追うことになります。感染症の危険もあります。

ミャンマーのサル

サルに人の友好表現は伝わりません。人から美味しい食べ物を奪えることを知ったサルは、より攻撃的な行動をとるようになるかもしれません。妙に人馴れしたサルには近づかないにこしたことはありません。