ラタンという植物は、籐とも呼ばれ、この植物を使って作られた椅子などの籐製品は、日本でもよく使われています。
籐製品は、ラタンの茎の部分を使います。ラタンの茎は、竹よりもしなやかに曲がるため、束ねたり、結んだりしやすく、その上に、簡単にはちぎれないため、重宝されてきました。
この有用なラタンですが、熱帯の森の中を歩く人にとっては、かなり厄介な植物です。というのは、鋭いトゲを植物体の様々な箇所に持っているからです。今回は、そんなロタンについてのお話です。
この記事の目次
ラタンとは?
ラタンは、ヤシ科の植物で約600種が知られています。アフリカ、アジア、オーストラリアなどの熱帯地域に生育しています。熱帯でが、暖かい低標高地帯から、3000mを超える高標高まで、様々な種が分布しています。ボルネオ島の熱帯雨林では、どこでも普通に見られ、林床では群生していることも多いです。
ラタンのいろいろなトゲ
森の中を歩く人をとても困らせるトゲですが、ラタンの種類によって、そのトゲの様子はさまざまです。
この憎々しいラタンのトゲの写真を集めてみました。
ラタンのトゲは、刺さった後厄介なことに先っぽが折れて皮膚の中に残ることがよくあります。ちょっと痛いですが、2,3日放置しておくと、自然と皮膚の中から出てきます。
ラタンがトゲをもつ理由
1. 捕食防衛のため
植物がトゲをもつ理由は?と聞かれて最も先に思いつくのは、サボテンのように、食べられないようにするため。という回答ではないでしょうか。私もずっとそうだと思っていました。実際に、トゲがあることによって捕食を免れる作用も確かにあるとは考えられます。横を通っただけで引っかかるほどに鋭いトゲをもった植物をわざわざ食べるためには、それなりの仕組みや工夫が必須だと考えられます。ラタンの生い茂るボルネオ島で、ラタンを好んで食べるような動物を私は知りません。
2. 他の木によじ登るため
他のトゲを持つ植物とは異なり、このトゲの用途は特徴的です。ラタンは、植物体を支持する強く太い幹を持たないことが多く、先に書いたように、籐として使われる細く、よくしなる、強靭な繊維質の茎を長く伸ばします。
この茎の先に葉を付けるのですが、葉と同時に、針だらけの糸のようなものをそこかしこに(できるだけ上向きに)垂らします。この釣り針だらけの釣り糸みたいな物は、歩く人の服や髪の毛だけではなく、近くに生えている背の高い植物にも引っかかります。
この釣り糸は、細いですが非常に強靭で、かなりの力で引っ張っても切れることはありません。この釣り糸を近くの植物に引っ掛け、植物体自体を上方向に持ち上げ、またその先から葉と釣り糸を出すという成長を繰り返していきます。こうしてラタンは、太陽光の少ない林床から、自らの体を支持する幹を作ることなく、太陽光が強く当たる上方へとよじ登っていくことができるようです。