春に野原で生き物を探すと、どんなところでもすぐに見つかるのがこのナナホシテントウではないでしょうか。テントウムシは、見た目の華やかなイメージからか、英語でlady bugと言われ、春の生き物の中でも人気者です。このかわいい色にもちゃんと理由があるのです。今回は、そんなナナホシテントウについてです。
ナナホシテントウの食性
ナナホシテントウはその可愛らしい見た目とは裏腹に子供のときから肉食で、成虫になっても、肉食です。テントウムシ科の中には、ニジュウヤホシテントウのように、幼虫から成虫まで植物の葉(ナス科の植物)を食べて成長するものもありますが、ナナホシテントウは、生涯アブラムシを食べます。そのため、農作物の害虫であるアブラムシを食べる益虫として重宝されています。ちなみに、キイロテントウというテントウムシは菌植生で、うどんこ病菌を食べてくれます。
ナナホシテントウが目立つ色をしているわけ
人の目を楽しませる色彩をもった生き物は、それほど珍しくはありません。クジャクやグッピーなどは、オスが鮮やかな色を持っていることによって、メスを惹きつけます。しかし、ナナホシテントウは、オスもメスも、鮮やかな赤に黒い点という目立つ色をしています。この色彩は、警告色だと考えられています。つまり、ハチの黄色と黒の縞々模様や、ヤドクガエルの派手な色と同じ役割です。ナナホシテントウは、物理的に攻撃を受けると苦くて臭い黄色い体液を出します。
この体液は、鳥などの捕食者にとっても、不快な味のようです。この食べると不愉快になるという経験を記憶してもらうために、ナナホシテントウは、印象的な派手な色をしていると考えられます。一見私達の目には、愉快な雰囲気に見えるナナホシテントウのカラーですが、テントウムシ本人は忌避的な作用を期待しているようです。
植木鉢のアブラムシを退治してくれたナナホシテントウ
小学生のころ、学校で育てていた鉢植えに大量のアブラムシが発生しました。ちょうどその頃、ナナホシテントウがアブラムシを食べるということを教わった私は、早速、大量のナナホシテントウを捕まえてきて、その鉢植えの植物の上に乗せました。すると、ナナホシテントウは、そこで卵を生み、小さな鉢植えの上で大量のテントウムシの幼虫が卵から孵りました。ナナホシテントウがモリモリ食べたおかげか、アブラムシの数は数が減ってきました。羽のある成虫のナナホシテントウは、アブラムシがいなくなると徐々にどこかに飛んでいったのですが…羽のない幼虫は、歩いてどこかに移動するしかありません。鉢植えから抜け出して、教室の中を歩き回るものまで現れました。
こんな狭いスペースにこんなに大量の卵を生んでしまうなんて、テントウムシというのは、なんて計画性がないのだろうと当時の私は思いました。しかし、少なくともナミテントウの研究によると、ナミテントウは、アブラムシが増加しているタイミングを見計らって卵を生むという計画性があるそうです(Osawa 2000)。小さな隔離された鉢植えの中という環境を、ナナホシテントウは流石に想定できなかったのかもしれません。とにかく、私のはじめての生物防除作戦は、思いの外うまくいき、うまくいき過ぎたために、テントウムシの子供が行き場に困ることになってしまいました。アブラムシ退治にテントウムシを使ってみると、意外と簡単に効果が出て、面白い観察ができるかもしれません。ちなみに、農家もテントウムシをアブラムシの防除手段として利用しています。
Osawa, Naoya. (2000). Population field studies on the aphidophagous ladybird beetle Harmonia axyridis (Coleoptera: Coccinellidae): Resource tracking and population characteristics. Population Ecology. 42. 115-127