ちょっと風変わりなヤブガラシの訪花昆虫

2019年7月19日 ALL生物
ヤブガラシに訪れるヒメスズメバチ

川辺や道脇よく見かけるヤブガラシは、6月から7月頃に花を咲かせます。特に華美とも特徴的であるともいえない小さな花を咲かせるのですが、なぜかその花にやってくる虫達はちょっと風変わりです。今回は、7月の昼間にヤブガラシの花にやってきた虫たちを紹介します。

ヤブガラシとは?

ヤブガラシブドウ科ヤブガラシ属の植物で、東アジアから東南アジア、日本では、北海道南西部から南西諸島まで分布します。ヤブを覆い尽くして枯らしてしまうほどの勢いで広がることから、ヤブガラシという名がついたようです。林床には見られず、明るい撹乱地のフェンスなどに、巻き付いているのがよくみられます。

ヤブガラシの花の特徴

ヤブガラシは、6月〜8月頃に5ミリくらいの小さな花が密集して咲きます。小さな花ですが、ツツジなどと異なり花の奥行きがほとんどないため、細長い口吻を持たないハエなどの昆虫でも蜜を舐め取ることができます。

ヤブガラシの花

ヤブガラシの花

咲き始めの花は、オレンジに近い色をしており、雄しべがついていて、花柱が短いですが、時間が経つと、ピンク色に近い色になり、雄しべが脱落し、花柱が伸びます。

 

ヤブガラシにやってきた虫

2時から3時頃に京都で観察してみたら、訪れた虫は、以下のような結果になりました。

ヤブガラシに来た昆虫

少なくとも京都周辺では、スズメバチなどのカリバチの仲間が、ハナバチに比べて頻繁に訪れるのがヤブカラシの花の特徴です。観察している間、常に何匹かのスズメバチが訪花していました。スズメバチが樹液を利用するのは多くの人が知っているかもしれませんが、花の蜜にもやってきます。カリバチの幼虫は、通常肉食ですので、ハナバチのように子育てのために蜜を集めるわけではありません。花や樹液から摂取した糖は成虫が行動するためのエネルギー源になります。植物にとって、カリバチの訪花は、花粉を運んで貰えること以外に別のメリットがあります。それは、葉や花を食べる芋虫などをカリバチが取り除いてくれる可能性があるということです。カリバチとしても、自分のエネルギー源を確保しつつ、幼虫の餌も手に入れば一石二鳥です。

あまり知られていないかもしれませんが、ハエも意外と花の蜜を利用します。写真に写しきれなかったものも含め、大きいハエから小型のハエまで様々な種が訪花していました。

今回の観察では、意外な訪花昆虫として、ナミテントウムシの幼虫、成虫がみられました。どちらも、アブラムシを好んで食べますが、少なくとも成虫については花の蜜を舐めることが知られています。今回は、ヤブガラシにアブラムシは発生しておらず、幼虫が花に顔を突っ込んでいるところが観察されたため、おそらく蜜を舐めていたのだと考えられます。

カリバチの仲間がたくさん訪れるので、観察が少し難しいかもしれませんが、訪花昆虫としてはあまり見かけない昆虫がたくさん見られる点で、ヤブガラシの花の観察はなかなか楽しいです。