ひねくれることには意味がある

2021年7月12日 ALL生物

ネジバナ Spiranthes sinensis は、春から夏にかけて、芝生の上でよく見られる小さなピンク色の花をつける雑草です。このネジバナ、名前の通り小さな花が螺旋状についているのですが、ねじれ具合が株によって異なります。今回は、ネジバナのねじれ具合についてお話したいと思います。

ネジバナとは?

ラン科ネジバナ属の多年草です。ヨーロッパ東部からシベリア、アジアの温帯から熱帯地域、オセアニアに分布し、日本でも全土で見られます。日当たりの良い、湿り気のある土地を好みます。ラン科では珍しく、都市の公園の芝生のような強い人為的撹乱を受けた土地でも見られます。花が可愛らしいため栽培されることもありますが、菌根菌と共生するため、共生菌がいない環境では栽培が難しいと言われています。

ねじれる花

ネジバナの特徴は、なんといっても小さな花が花茎に螺旋状に並んでついていることです。このねじれ具合は株によって異なり、全くねじれずに一直線に花茎の片側にすべての花がついているものから、花茎の周りを花が何周も回っているものもあります。

ネジバナ

ねじれの少ないネジバナ

ネジバナ

ねじれの強いネジバナ

左巻きか右巻きかにもこだわりはなく、大体1対1くらいの割合で混在しているようです。

ネジバナがねじれる理由

ネジバナは、昆虫に花粉を雌しべに運んでもらうことによって種子を作ります。ネジバナには、ハナバチがよく訪れます。ハナバチは、花がたくさんついた株に好んで訪れる傾向があります。ネジバナのねじれ具合が小さい株は、大きい株に比べて沢山花をつけているように見えるため、ハナバチが頻繁に訪れます。そのため、種子生産の面から言えばねじれの小さい株は有利です。一方、種子の遺伝的多様性を高める面では不利です。というのは、ねじれの小さいものは大きいものよりも隣の花同士の距離が近いため、ハナバチは次々と同じ株の隣の花に訪れることが多くなり、自家受粉が頻発してしまうためです。ネジバナは、隣り合う花の向きを調整することで、ハナバチが隣の花に次々と移動する頻度をコントロールしているものと考えられます。すなわち、訪花昆虫が少ない環境では、ねじれの少ない花が有利であり、訪花昆虫が十分に存在する環境では、自家受粉をより防ぐことできるねじれの大きい花が有利になるということです。生育する環境の訪花昆虫の量や質の差異により、どれぐらいのねじれを持った花が有利になるかが異なるため、ネジバナの花のねじれ具合は固定されることなく、様々なものが混在するのです。

 

[参考文献]
Iwata T, Nagasaki O, Ishii HS, Ushimaru A. Inflorescence architecture affects pollinator behaviour and mating success in Spiranthes sinensis (Orchidaceae). The New phytologist. 2012;193:196-203.