
ハエ目の昆虫の中には、病気を媒介したり、刺したり、排泄物にたかったり、食べ物の周りを飛び回ったりするものがおり、ハエは嫌われ者になりがちです。多様な環境に適応する能力があるために、様々な場面で人と関わりが生じるものの、多くのハエは、我々に何ら実害を及ぼすことはありません。むしろ、我々に利益をもたらしてくれるハエも存在します。驚くべき生態を身に付けたハエは非常に興味深い生き物です。今回は、そんなハエの多様な面白い生態を紹介したいと思います。
この記事の目次
ハエ目(双翅目)とは?

キンバエ
ハエ目には、普段我々が、カ、ガガンボ、ハエ、アブ、ブユなどが含まれます。ハエ目の昆虫の中にはハチに擬態するものもあります。そのようなハエは一見したところハチと間違えることがありますが、ハチも含めて他の昆虫の羽が4枚あるのに対し、ハエ目の昆虫は2枚しかありません。これは、ハエ目の大きな特徴です。日本に約60科3000種が知られており、世界では、16万種記録されていますが、まだ記載されていない種がかなりたくさんあるものと考えられています。昆虫綱の中では、甲虫目35万種、チョウ目17万種に次ぐ種数です。
ハエ目の驚くべき多様な生態
ハエの仲間の大きな特徴として、食性の幅が非常に大きいというのがあげられます。そのため、いろいろな環境でいろいろな習性をもつハエの仲間が進化しました。
自らを光らせ、粘液を垂らし狩りをするヒカリキノコバエ

ヒカリキノコバエの幼虫の巣 photo by Mnolf [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons
大型哺乳動物の鼻の穴に寄生するヒツジバエ

ヒツジバエ科のハエの一種 photo by Notafly [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons
カの血を盗むヌカカの仲間

ヌカカ photo by Scott Bauer, USDA ARS [Public domain], via Wikimedia Commons
ウシをも殺す、ブユの大量発生

ブユ photo originally by Head at German Wikipedia.Later versions were uploaded by Aka at de.wikipedia. [Public domain], via Wikimedia Commons
メスに餌を運んでプレゼントするオドリバエ科

オドリバエ科のハエの一種 Rhamphomyia lamellata from James Lindsey at Ecology of Commanster [CC BY-SA 2.5], via Wikimedia Commons
オスに踊りを披露してアピールするホソオドリバエ属
地球に生息するほとんどの生物において、交尾相手を選択するのは、メスです。というのは、オスは卵に比べ精子を大量に生産することができるため、何匹ものメスと交尾することができます。一方、メスが作ることができる卵は精子よりもずっと限られているため、優秀な遺伝子をもったオスを吟味する傾向が強くなるからです。そういった意味で、メスがオスにアピールするというのは、非常に珍しいことといえますが、ホソオドリバエ属の一種は、メスがお腹を膨らましたり、しぼませたりしながらオスの前でダンスをし、多くの卵をお腹に入れられることをアピールします。
送粉者として役に立つハエ

カカオの花 photo by H. Zell [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons
参考文献: Erica McAlister, 2017, “The secret life of flies” ; エリカ・マカリスター 著, 桝永一宏 監修, 鴨志田恵 訳, 2018,『蝿たちの隠された生活』