多種多様なハエの驚くべき生態

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多種多様なハエの驚くべき生態

2019-07-24T11:57:48+09:00 2019年7月24日|Categories: ALL 生物|Tags: , , , |
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ハエ目の昆虫の中には、病気を媒介したり、刺したり、排泄物にたかったり、食べ物の周りを飛び回ったりするものがおり、ハエは嫌われ者になりがちです。多様な環境に適応する能力があるために、様々な場面で人と関わりが生じるものの、多くのハエは、我々に何ら実害を及ぼすことはありません。むしろ、我々に利益をもたらしてくれるハエも存在します。驚くべき生態を身に付けたハエは非常に興味深い生き物です。今回は、そんなハエの多様な面白い生態を紹介したいと思います。

ハエ目(双翅目)とは?

キンバエ?

キンバエ

ハエ目には、普段我々が、カ、ガガンボ、ハエ、アブ、ブユなどが含まれます。ハエ目の昆虫の中にはハチに擬態するものもあります。そのようなハエは一見したところハチと間違えることがありますが、ハチも含めて他の昆虫の羽が4枚あるのに対し、ハエ目の昆虫は2枚しかありません。これは、ハエ目の大きな特徴です。日本に約60科3000種が知られており、世界では、16万種記録されていますが、まだ記載されていない種がかなりたくさんあるものと考えられています。昆虫綱の中では、甲虫目35万種、チョウ目17万種に次ぐ種数です。

 

ハエ目の驚くべき多様な生態

ハエの仲間の大きな特徴として、食性の幅が非常に大きいというのがあげられます。そのため、いろいろな環境でいろいろな習性をもつハエの仲間が進化しました。

 

自らを光らせ、粘液を垂らし狩りをするヒカリキノコバエ

ヒカリキノコバエ

ヒカリキノコバエの幼虫の巣 photo by Mnolf [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

オーストラリアやニュージーランドに生息するヒカリキノコバエは、洞窟の中で青白い光を発して、虫を引き寄せます。引き寄せられた虫は、幼虫が垂らした粘液付きの糸に引っかかり、捕まります。この粘液の玉がついた糸は、長さ40cmに達することがあり、一匹の幼虫の巣から、70本ほど垂れ下がるようです。

大型哺乳動物の鼻の穴に寄生するヒツジバエ

ヒツジバエ科のハエ

ヒツジバエ科のハエの一種 photo by Notafly [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

ヒツジバエは、ラクダやカンガルーの鼻の穴に寄生することが知られています。ヒツジバエの幼虫は、その後咽頭や肺に入って成長します。寄生された動物は、気管支炎や二次的な細菌感染を起こすことがあり、ひどいときには死んでしまうようです。

 

カの血を盗むヌカカの仲間

ヌカカ

ヌカカ photo by Scott Bauer, USDA ARS [Public domain], via Wikimedia Commons

ヌカカの仲間には、血をたっぷり吸ったカの腹に口吻を差し込み、カが吸血してきた血を吸うものがいます。大型動物に潰される危険を回避して、血を得るというなんともしたたかな方法です。

 

ウシをも殺す、ブユの大量発生

ブユ

ブユ photo originally by Head at German Wikipedia.Later versions were uploaded by Aka at de.wikipedia. [Public domain], via Wikimedia Commons

ブユ一匹の体サイズは非常に小さいのですが、大量発生することがあり、大量のブユに襲われたウシが26頭も出血死したという報告があります。死んだウシは、平均して2万5千ヶ所の刺された跡があり、最も多いウシでは、5万5千ヶ所も刺されていたようです。

 

メスに餌を運んでプレゼントするオドリバエ科

オドリバエ科のハエの一種

オドリバエ科のハエの一種 Rhamphomyia lamellata from James Lindsey at Ecology of Commanster [CC BY-SA 2.5], via Wikimedia Commons

オドリバエの仲間には、メスが一切狩りをせず、オスに餌を持って来させるものがいます。メスは、そのプレゼントの獲物を食べている間だけ、交尾に応じます。つまり、オスの交尾時間は、自分がプレゼントした獲物の大きさによって決まるという、なんとも分かりやすいルールです。ですが、こういったメスの行動に対して対抗策を身に着けた種があります。ミナモオドリバエ属の仲間には、プレゼントを絹のような糸でぐるぐる巻きに包んで(いわばプレゼントをラッピングして)メスに渡します。もらったメスが、そのラッピングを外すのに手間取っている間にオスは、長い交尾時間を手に入れるようです。しかも、ひどいことに、オスが交尾を終えても、まだメスがプレゼントを食べきっていない場合は、そのプレゼントをメスから奪い取り、別のメスのところに運んでまた求愛に使うそうです。非常にコスト削減になる行為ですが、人間なら、絶対に許してもらえないですね。

 

オスに踊りを披露してアピールするホソオドリバエ属

地球に生息するほとんどの生物において、交尾相手を選択するのは、メスです。というのは、オスは卵に比べ精子を大量に生産することができるため、何匹ものメスと交尾することができます。一方、メスが作ることができる卵は精子よりもずっと限られているため、優秀な遺伝子をもったオスを吟味する傾向が強くなるからです。そういった意味で、メスがオスにアピールするというのは、非常に珍しいことといえますが、ホソオドリバエ属の一種は、メスがお腹を膨らましたり、しぼませたりしながらオスの前でダンスをし、多くの卵をお腹に入れられることをアピールします。

 

送粉者として役に立つハエ

カカオの花

カカオの花 photo by H. Zell [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

送粉者といえばハチであり、ハエが送粉しているといってもピンとこない人も多いかもしれません。しかし、ハエがいないと、受粉出来ない植物も存在します。例えばカカオです。カカオの送粉はもっぱらヌカカに頼っています。ヌカカは湿った日陰を好むため、植物を伐採して整備した区画では、ヌカカが減少し、そこで育てているカカオの受粉率も非常に低下してしまったようです。近年の研究で、カカオに限らず、多くの植物でハエは送粉者として重要であることが指摘されています。

 

参考文献: Erica McAlister, 2017, “The secret life of flies” ; エリカ・マカリスター 著, 桝永一宏 監修, 鴨志田恵 訳, 2018,『蝿たちの隠された生活』