沿岸から内陸へ 新しい住処を見つけたイソヒヨドリ

///沿岸から内陸へ 新しい住処を見つけたイソヒヨドリ

沿岸から内陸へ 新しい住処を見つけたイソヒヨドリ

2019-09-09T17:25:21+09:00 2019年9月9日|Categories: ALL 生物|Tags: , , |
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美しい鳥の鳴き声とともに起きる朝。数ヶ月前から、急にそんな日が多くなりました。何年も暮らしてきましたが、それまで一度も聞いたことが無かった大音量の美声が、住宅街の早朝にこだまします。始めは、近所で誰かが鳴き声の良い鳥を飼い始めたのかと思っていましたが、どうやら、声の主は、あちこちに自由に移動している模様。気になって調べてみると、その声の主は、なんとイソヒヨドリでした。私の住んでいるところは、海なし県の奈良。どうやら、かつては、海岸沿いにのみ住んでいたイソヒヨドリが、近年内陸でも見られるようになってきたようです。

イソヒヨドリとは?

イソヒヨドリのメス

Photo by Alpsdake [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons

スズメ目、ヒタキ科の鳥です。ヒヨドリという和名がついていますが、ヒヨドリ科ではありません。海岸近くで見られるヒヨドリに似た鳥ということでこの紛らわしい名前がつけられたようです。ヒタキ科の鳥には、オオルリやトラツグミ、ルリビタキなどがいます。

イソヒヨドリの分布域は広く、アフリカやユーラシア大陸で見られます。世界的には、標高2000m以上の高山の岩場で見られる種とされていますが、日本では、磯や港などの海岸付近で見られる種です。

内陸に進出したイソヒヨドリ

かつては、海岸付近にのみ生息することが報告されていたイソヒヨドリですが、ここ20年で、特に、近畿から関東にかけて、内陸への進出が顕著になっています。海岸から10キロ以上内陸に入った地域でも、普通に見られるようになりました。しかも、人為的活動の影響が大きい環境である都市部や、住宅街で頻繁に見られるようになっているようです。

イソヒヨドリの都市での生活

イソヒヨドリのオス

イソヒヨドリのオス 鳴き声だけでなく見た目も美しいです。 Photo by yoshiharu from フォト蔵

海岸付近と都市部では、大きく環境が異なりますが、イソヒヨドリは都市部でどのように生活しているのでしょうか。2011年頃に、神戸の市街地に生息しているイソヒヨドリについて調査が行われました(鳥居 & 江崎, 2014)。その結果、以下のような生活様式が明らかになりました。

・緑地区や住宅区に比べ、高層マンション区で、発見頻度が高い。

・オスが高い場所をさえずりの場所(ソングポスト)として利用している。

・営巣場所は、トタン屋根の隙間やアーケードの鉄骨の隙間。

・採餌は主に草地の地面で、つまみ取り。

・親鳥がヒナに与える餌は、ゴミムシや鱗翅目の幼虫など、主に地上徘徊性の昆虫(フナムシが取れないこと以外は、海岸での食性とそれほど変わらない)。

これらのことから、都会に進出したイソヒヨドリは、巣を人工構造物に作り、近くの草地の地面で主に地上徘徊性生物を採餌し、オスは、高層マンションの構造物を、元々の生息場所である高低差のある岸壁の代わりに、縄張り行動に利用することで、都市部で生活しているということが明らかになりました。

ここ20年の間に、イソヒヨドリを内陸への進出させた要因については、未だ謎は残りますが、イソヒヨドリは、人工構造物と、都市に残された緑地を利用することにより、新たな生息環境を開拓し、生息地を拡大しているようです。

 

【参考文献】

認定NPO法人 バードリサーチ 「内陸へ拡がるイソヒヨドリ・分布拡げるガビチョウ・ホンセイインコGW イソヒヨドリ・ガビチョウ・ホンセイインコ調査の結果から」バードリサーチニュース2018.5.24(最終閲覧日2019.9.9)http://db3.bird-research.jp/news/201805-no2/

鳥居 憲親, 江崎 保男 『イソヒヨドリのハビタットとその空間構造―内陸都市への進出―』 山階鳥類学雑誌, 2014年, 46巻1号 p15-24