驚異の耐性を持つクマムシのちょっと詳しいお話

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驚異の耐性を持つクマムシのちょっと詳しいお話

2020-02-16T00:13:15+09:00 2020年2月16日|Categories: ALL 生物|Tags: , , |
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クマムシはなにやらやたら強い、ということはどこかで聞いたことがある方も多いかもしれません。ですが、実は普通に元気に動き回っているクマムシを急に乾燥させたり、高温に晒したりするとすぐに死んでしまいます。クマムシは乾眠という特殊な状態になって始めて、その類まれなる能力を発揮します。今回は、そんな乾眠やクマムシの生態についてのお話です。

クマムシとは?

クマムシの一種 Photo by Willow Gabriel, Goldstein Lab [CC BY-SA]

クマムシは、緩歩動物門に属する動物の総称であり、1000種ほどが知られています。リンネ式分類階級では、生物は、ドメイン、界、門、鋼、目、科、属、種と分類され、門は、かなり上の階級です。緩歩動物の化石は、地球上の生物が爆発的に増えたと考えられているカンブリア紀の地層から見つかっており、緩歩動物は、地球に生物が繁栄し始めたかなり初期の頃から存在している生き物といえます。

体長は、50 µm — 1.7mmで、4対の足を持っています。水の中を歩く様子がクマのように見えることから英名でWater bearと名付けられ、和名でもクマムシと名付けられました。ムシとついていますが、一般的にムシと呼ばれる生き物の多くは節足動物門に属するので、一般的なムシとは全く異なる生き物です。

どこにいるの?

一対の目と足の爪がよくわかるクマムシの画像Frank Fox [CC BY-SA 3.0 DE]

深海から高山、熱帯から極地域、温泉の中まで、ありとあらゆるところに生息しています。もちろん、私達の身近にもいます。湿ったコケを採取し、顕微鏡で観察すると、見つかることが多いです。どこでも生きられるというと、どこでも動き回っているという印象を持つかもしれませんが、動き回るのは、水中や水分の多い環境だけだと考えられています。乾燥すると、樽型になって乾眠と呼ばれる状態になり、また十分な水が得られるまで待ち続けます。

何を食べているの?

クマムシは、ワムシやセンチュウなどの微小生物、他のクマムシを食べる肉食性のものや、藻類やコケを食べる草食性のもの、雑食性のものもいます。

乾眠とは?

めちゃくちゃ強いことで有名なクマムシですが、元気に動き回っているものを急に過酷な環境に晒すと、あっという間に死んでしまいます(放射線に対しては乾眠しなくてもかなりの耐性があります)。クマムシをゆっくり乾燥させると、体を縮め、代謝をほとんど停止して、乾眠と呼ばれる状態になります。

乾眠は、ワムシやネムリユスリカなどクマムシ以外の生物でも行うことが知られています。一方、クマムシの中にも、乾眠をしない種もおり、それらの種は、極端な環境にさらされると簡単に死んでしまいます。乾眠をする多くの動物に共通して起こることは、乾眠時に、体内のグルコースをトレハロースに変えて蓄積させるということです。トレハロースは、昆虫や菌類、植物などの多くの生物に含まれています。干し椎茸にも多く含まれており、干し椎茸を水につけると、もとの状態と似た状態に戻るのは、トレハロースの作用だと考えられています。トレハロースの作用機序については、複数の仮説があり、まだ完全には明らかにされていないようです。

クマムシについては、トレハロースの蓄積量がそれほど多くないため、他にも、なにか別の機構があるのではないかと推測されています。

無敵!?の乾眠

乾眠状態のクマムシが耐えたことが報告されたことがある極限状態を以下に示します。

乾眠状態に入ったすべてのクマムシが、以下の状態に耐えられることが証明されているわけではありません。また、少なくとも放射線を当てた研究では、生き延びはしたが、寿命が短くなったり生殖能力が無くなったりと、クマムシが大きなダメージを受けていることがわかっています。

・温度:-273℃〜100℃

・乾燥:体重に占める水分の割合が0-3%(もともとは85%ほど)

・放射線:高線量の紫外線、5000GyのX線、5000-7000Gyのガンマ線(ヒトは10Gyのガンマ線に当たるとほぼ助からない)

・圧力:真空から75,000気圧(1 cm2に約75,000kgかかる圧力)

・アルコールなどの有機溶媒への暴露

放射線に対する耐性は、乾燥によって細胞にかかるストレス(DNAの破壊、酸化)と放射線によってかかるストレスが似ており、乾燥耐性をより強化していった結果獲得したものと考えられます。なお、放射線に対する耐性は、乾眠しなくても乾眠時と同じかそれ以上であるようです。

 

【参考文献】

堀川大樹(2013)『クマムシ博士の「最強生物」学講座』新潮社