蚊ではないユスリカという生き物

2020年7月10日 ALL生物

ユスリカは、蚊とよく似た見た目をしているため、しばしば蚊と勘違いされます。しかし、ユスリカは、蚊とは全く異なる分類群の生物であり、人を刺すことはありません。今回は、そんな蚊との混同により濡れ衣を着せられることが多い昆虫、ユスリカの生態についてのお話です。

ユスリカとは?

ユスリカ
ハエ目ユスリカ科の昆虫の総称です。人を刺すヤブカやアカイエカは、ハエ目カ科の生物ですので、見た目は同じように見えますが、大きく異なる生物です。ユスリカ科の生物は、世界では約1万5000種、日本では約2000種が知られています。成虫になっても蚊のように、人の血を吸うことはなく、花の蜜を吸いにくるものもいます。

成虫になると餌を食べないというのは本当?

成虫になると口器が退化し、餌を食べないとよく言われていますが、すべての種がそうであるわけではありません。食べなくても繁殖はできますが、食べたほうがより繁殖能力が高くなる種もいることがわかっています。

ユスリカはなんのために蚊柱を作るのか。

蚊柱
蚊柱と言いますが、実は、蚊だけでなくユスリカも蚊柱を作ります。蚊柱に集まっている個体のほとんどは、オスです。オスが集団になることによって目立ち、メスはオスの居場所を知ることができるものと考えられています。数百匹のオスが蚊柱に集まるのに対して、そこに飛び込んでくるメスは数匹であるため、蚊柱は常にオスだらけの集団です。つまり蚊柱は、ユスリカにとっては、やたらオスの多い婚活会場のようなものです。
蚊柱は、周辺より少し高い物の上に作られる傾向があるため、人の頭の上によく蚊柱が作られ、人が移動しても蚊柱がついてくることがあります。そんなときは、自分よりも少し高めの物の近くに行くと、蚊柱をそちらに移すことができます。

水を浄化するユスリカ

ユスリカ

ほとんどのユスリカについて、幼虫は水生です。釣りの餌や金魚の餌に使われるアカムシもユスリカの一種の幼虫です。ユスリカの仲間の一部は、生活排水により富栄養化の進んだ環境でも生きることができ、大発生することがあります。大発生したユスリカは、成虫になって外に飛び出します。このことによって、有機物が増えすぎた川や池から、有機物をそれ以外の環境に持ち出すことになり、川や池が浄化されます。都市に近い湖や川の付近では、ユスリカの大量発生が洗濯物を汚したり、ごく稀にアレルギーを引き起こすといった理由で問題になります。しかし、ユスリカが大量発生する原因が人間の活動にあり、ユスリカは人によって汚染された川や池を元のきれいな環境に戻すことに役立っていると考えると、ユスリカは恨むべき対象ではありません。ユスリカが大量発生したとしても、単に駆除するのではなく、問題の根本的な解決を図るべきです。