アゲハの仲間は変わった匂いがする葉が好き?

2020年8月15日 ALL生物

アゲハの仲間の幼虫は、ミカン科の葉を食べるということは、よく知られていますが、アゲハの仲間にもミカン科以外の植物を食べるものが結構たくさんいます。
今回は、アゲハの仲間がどんな食べ物を食べるのかについてお話したいと思います。

アゲハの幼虫と言ったらミカンの仲間

植物は、昆虫や動物に食べられないようにするために様々な防御手段を身に着けています。茎や幹に棘を持ったり、硬い葉を持つのは物理的な防御の一つです。葉の鋸歯(縁のギザギザ)も動物に食べられにくくする役割があると言われます。また、葉に毒を蓄えている植物もあります。人間は、柑橘や山椒の香りを爽やかな良い匂いと感じますが、その匂いを忌避する動物は多くいます。柑橘から抽出した成分を含んだ虫よけスプレーを使ったことがある方もおられるのではないでしょうか。ところが、アゲハチョウ科の幼虫にはミカン科の植物の葉っぱを食べるものが多くいます。アゲハの代表種であるナミアゲハを始めとし、ナガサキアゲハ、モンキアゲハ、クロアゲハ、カラスアゲハなどがミカン科の葉っぱを食べます。

ナミアゲハ Papilio xuthus

ナミアゲハ

ナミアゲハ photo by aes256 from フォト蔵

ナミアゲハ幼虫

ナミアゲハ幼虫 photo by circias from フォト蔵

ミカン科以外を食べるアゲハの仲間

アゲハの仲間の多くは、ミカン科を食べると先に書きましたが、意外と身近には、ミカン科以外の植物を食べる種もいます。

キアゲハ Papilio machaon

キアゲハ photo by congerdesign from Pixabay

本種は、アゲハチョウ科アゲハチョウ属に属し、ナミアゲハとともによく見られるアゲハの仲間です。

キアゲハ幼虫

キアゲハの幼虫 Photo by zoosnow from pixaby

幼虫の食草は、パセリやニンジン、シシウドなどセリ科の仲間です。他のアゲハの仲間の終齢幼虫と異なり、本種の終齢幼虫は黄色と黒の縞模様のような派手な色をしています。

アオスジアゲハ Graphium sarpedonアオスジアゲハ
本種は、アゲハチョウ科アオスジアゲハ属に属し、日本では本州以南に生息します。世界では、東アジア、東南アジア、オーストラリアの北部と分布域の広い南方系のチョウです。

アオスジアゲハ幼虫

幼虫の食草は、クスノキ、タブノキ、シロダモなどのクスノキ科の植物です。

ジャコウアゲハ Atrophaneura alcinous

ジャコウアゲハ

ジャコウアゲハ Photo by 西表カイネコ from フォト蔵

本種は、アゲハチョウ科ジャコウアゲハ属に属し、日本では、秋田県以南から八重山諸島まで分布します。世界では、東アジアに分布します。雄成虫からジャコウのような匂いがすることからこの和名がつけられました。

ジャコウアゲハの幼虫

ジャコウアゲハの幼虫 Photo by Cory / CC BY-SA 2.1 JP

幼虫は、ウマノスズクサの仲間を食べます。本種の終齢幼虫は、色を変えることなく、黒いままです。ジャコウアゲハは、幼虫の頃にウマノスズクサの葉に含まれる毒を蓄積し、成虫になってもその毒を保持します。この毒によって、天敵からの捕食を免れていると考えられています。