コスモスは日本の秋を彩る人気の植物ですが、実は日本の在来種ではありません。今回は、コスモスの出身地や生態についてのお話です。
コスモスとは?
コスモスは、キク科コスモス属の一年生植物です。一般的にコスモスと呼ばれる種は、Cosmos bipinnatusという学名がつけられた種です。他に、日本で園芸に利用されるコスモス属の植物には、キバナコスモスCosmos sulphureus、チョコレートコスモスCosmos atrosanguineus などがあります。
キバナコスモスは一年生ですが、チョコレートコスモスは多年生です。また、チョコレートコスモスは、チョコレートのような甘い香りがするという特徴があります。これら3種のコスモスは、全てメキシコ原産です。メキシコを訪れたスペイン人が、18世紀末にコスモスをヨーロッパに持ち込んだと言われています。コスモスの仲間が栽培されるようになってから200年ほどが経っており、これらの種から様々な品種が作られています。
コスモスはどんな環境に生きる植物?
コスモスの原産地はメキシコであるため、暖かい気候を好む種と思われるかもしれませんが、実は年間を通して涼しいメキシコの標高1600 m – 2800 mの地域にしか自生ません。たとえば、標高2300 mのメキシコシティでは、最も気温が低くなる1月の最高平均気温が21度、最低平均気温が5度、最も気温が高くなる4月でも最高平均気温が27度、最低平均気温が9度です。メキシコでも、日本と同様、休耕地や道端でよく見られるようです。
一方、キバナコスモスは、メキシコの標高1600m以下に生育します。そのため、コスモスよりも暑さに強い性質があります。
チョコレートコスモスの原種もメキシコに生息していましたが、すでに絶滅したと考えられています。チョコレートコスモスは、暑さにも寒さにもそれほど強くありません。
コスモスは短日植物
コスモスの花は、日が出ている時間が短くなってくる、つまり夜の暗い時間が長くなってくると花を形成する短日植物です。このため年間を通してあまり気温の変化が無いメキシコでも、日本と同じように日長時間が短くなる秋頃に花が咲きます。ですが近年、品種改良が進み、6月頃から花を咲かせる品種も作られています。
野生化するコスモス
コスモスは、日当たりと風通しが良ければ、土壌を選ばず育つ丈夫な植物であり、花もきれいなため園芸種として人気があります。日本には明治に渡来し、各地で鑑賞用に栽培されてきましたが、1969年に野生化していることが確認されました。河川敷や休耕田などに勝手に生え、在来植物と競合することが心配されています。