サンタクロースのソリを引くトナカイはみんなメス

2020年12月24日 ALL生物
トナカイ Photo by Walter Baxter via geograph.org.uk

クリスマスにサンタさんのソリを引く生き物は、立派な角の生えたトナカイです。立派な角が生えているのだから、なんとなくオスだと思っている人も多いかもしれません。ですが、実はトナカイの生態から考えるとメスしか有り得ません。今回は、トナカイの角のお話です。

角を生やすシカ科のオス

ニホンジカ

ニホンジカ:角が生えているのはオス。

なんとなく、シカは、角が生えている方がオス、という印象がある方も多いかもしれません。実際、トナカイ以外のシカ科はオスだけが角を生やします。角は一年に一度生え変わります。角は春になると生え始め、繁殖期である秋に最大になり、繁殖期が終わる冬頃に抜け落ちます。ニホンジカでは、オスの角は5-6歳頃まで毎年枝が一本ずつ増え、見た目にもどんどん立派になります。大きな角は、オス同士の戦闘に役に立つのはもちろん、十分に成長し、経験もつんだことをアピールするのにも役立つと考えられます。ニホンジカでは、繁殖期になると複数頭のメスの群れを一頭のオスが囲いますが、オスはメスが逃げ出さないように常にメスを追いかけ回します。つまり、メスはオスが気に食わないと逃げ出す可能性があり、複数頭のメスが同時に逃げ出そうとするとオスもメスを囲いきれません。オスが立派そうに見えることは、メスの逃走を防ぐためにも、重要であると考えられます。大きくて立派な角をわざわざ毎年作り直す理由については確立した説はありませんが、実際に戦闘には影響のなさそうな傷であっても毎年新しい角に作り変え、年齢に応じて枝の数を増やして見た目を良くすることは、メスに立派なオスであることをアピールするという意義があるのかもしれません。

角を生やすトナカイのメス

トナカイ

トナカイのメス Photed by jeff collins

毎年立派な角を生やすのは、かなりのコストがかかりますが、メスを獲得するためにシカの仲間のオスは角を生やすと前述しました。しかし、トナカイはシカ科で唯一メスも角を生やします。この理由については、角をつけることが雪を掘って食べ物を探すのに役立つためだと考えられています。そのため、トナカイのメスは冬になると角を持ち、春から夏にかけては角を落とします。メスの角は、毎回生え変わる必要は本来なさそうですが、シカ科全般に持っている毎年生え変わるという元々の形質はなかなか変更しにくいのかもしれません。

一方、オスのトナカイは他のシカの仲間と同様に春に角が生え始め、繁殖期が終わる秋から冬ごろには角を落とします。角の大きさはオスのほうが立派です。

ソリを引くのはメスのトナカイ

前述したように、オスのトナカイは繁殖期が終わった秋から冬にかけて角を落とすため、冬には角がありません。冬に角を生やしているのはメスだけであるため、サンタさんのソリを引く立派な角のトナカイはメスだということになります。

ちなみにトナカイの鼻の先には、毛細血管が集まっており、鼻先の毛が白い個体では鼻が赤く見えることがあるようです。