葉の真ん中に花が咲く植物と聞いて、ハナイカダを思いつく方がおられるかもしれません。今回取り上げるのは、ハナイカダとは全く別の植物、ナギイカダです。ハナイカダもなかなかですが、この植物もかなり変わり者です。
ナギイカダとは?
キジカクシ目キジカクシ科ナギイカダ属の植物です。キジカクシ科には、アスパラガス、スズラン、ヒヤシンスが含まれます。ナギイカダ属には、7種あります。Ruscus aculeatus に、ナギイカダという和名がついていますが、別のナギイカダ属の植物もナギイカダとして売られていることがあるようです。日本には、江戸時代末期から明治時代初期頃に持ち込まれたと考えられています。
ナギのような葉をもち、ハナイカダのように葉の上に花を咲かせているように見えることからナギイカダと名付けられました。しかし、ハナイカダはモチノキ目ハナイカダ科の植物ですので、ナギイカダと近縁ではありません。
ナギイカダの原産地は?
ナギイカダ Ruscus aculeatusは地中海沿岸に生息します。他のナギイカダ属の植物は、トルコやアゼルバイジャンなどに分布するようですが、どの種も地中海周辺のようです。
じつは、葉ではない葉っぱのような枝
ナギイカダの葉は、花の付け根から出た鱗片状の小さなものです。ナギイカダの葉のように見える部分は実は、葉ではなく仮葉枝と言われる器官です。仮葉枝では、枝が発達するときに働く遺伝子と、葉で働く遺伝子の両方が発現しており、枝起源の器官に葉の性質が付加された器官であることが遺伝解析の結果から明らかになっています。ちなみに、アスパラガスも、棒状の仮葉枝をもち、葉を平らにする遺伝子の働きが変化して、棒状になったと考えられています、
葉に花が咲いているように見えるナギイカダ
ナギイカダは葉から花が出ているように見えますが、葉に見える部分が枝を起源とする器官であるため、枝から花が出る一般的な植物と同じ作りであると言えます。つまり、ナギイカダが他の植物と比べ特殊である点は花の位置ではなく、枝の形であるということです。ちなみに、ハナイカダが花をつけている葉に見える器官は、見た目の通り正真正銘の葉です。
【参考文献】
Nakayama H, Yamaguchi T, Tsukaya H. Acquisition and diversification of cladodes: Leaf-like organs in the genus Asparagus. Plant Cell. 2012;24:929-940. doi:10.1105/tpc.111.092924