地球温暖化が起こすフェノロジカルミスマッチ

2021年2月20日 ALL生物
コマツグミ Photo by William H. Majoros, https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0, via Wikimedia Commons

地球温暖化による生物への影響のひとつに、鳥の渡りの時期や、植物の開花や紅葉の時期の変化があげられます。こうした個々の種の生態の変化は、さらに、その種と関係のある種の生態にも大きな影響を及ぼす事があります。今回は、動植物の季節的なイベントのタイミングがずれることによる問題、フェノロジカルミスマッチのお話です。

フェノロジカルミスマッチとは?

ツキノワグマ

ツキノワグマ

季節の変化に伴って、生物が行動や状態を変化させること、もしくはそのことを研究する学問のことをフェノロジー(phenology)、生物季節[学]と言います。例えば、サクラが春に開花することや、カエデが秋に紅葉すること、クマが冬に冬眠し、春に冬眠から覚めて樹木の若葉を食べ、秋には木の実を大量に食べて冬眠に備える、こういったものをフェノロジーと呼びます。フェノロジカルミスマッチとは、その生存に重要な関わりをもつ生物同士のフェノロジーがずれてしまうことを意味します。その具体的な例を紹介します。

植物と昆虫の間で起こるフェノロジカルミスマッチ

エゾエンゴサク

エゾエンゴサクの花 Photo by Qwert1234, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

春の雪解けの時期に花を咲かせるエゾエンゴサクは、マルハナバチによって花粉が運ばれます。エゾエンゴサクは雪解けに合わせて開花する性質をもっており、雪解けが早い年にはエゾエンゴサクも早く咲きます。一方、マルハナバチは地温が6℃以上にならないと活動を始めません。雪解けが早く起きる年は、地温が6℃以上になる前にエゾエンゴサクが花を咲かせてしまい、マルハナバチによる送粉がうまく行われず、エゾエンゴサクの結実率が低下しました。植物の開花時期と、花粉を運ぶ昆虫の出現時期がずれてしまったことが、植物の繁殖に負の影響を及ぼした事例です。なお、近年温暖化の影響を受けて、雪解けの早春化していることが指摘されています。

鳥と鳥の餌資源の間で起こるフェノロジカルミスマッチ

ツバメ

鳥の中には、長距離を移動するものがいます。たとえば、ツバメは、子育てをするために春に熱帯地域からやってきます。わざわざ熱帯から温帯の日本に移動してくる理由は、日本の春がツバメの子育てに適しているからです。日本では冬の間活動を休止していた昆虫たちが、春になると一斉に活動を始めるため、ツバメは子育てに必要な昆虫をたくさん捕ることができます。しかし、温暖化により春に虫が活動を始める時期だけが早まる、もしくはツバメがやってくる時期だけが早まると、ツバメが子育てをする時期に十分な虫が捕れなくなるかもしれません。このように、鳥の渡りの時期と、その餌資源が増えるタイミングが温暖化によってずれてしまうことが懸念されています。

[参考]

Kudo, G., & Cooper, E. J. (2019). When spring ephemerals fail to meet pollinators: Mechanism of phenological mismatch and its impact on plant reproduction. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 286. https://doi.org/10.1098/rspb.2019.0573