卵にするか 赤ちゃんにするか

2021年3月21日 ALL生物
アオカナヘビ

子供を生む、つまり胎生の生き物は、なんとなく哺乳類だけだと考えている人は多いかもしれません。ですが、実は昆虫や硬骨魚類、軟骨魚類など哺乳類以外の分類群の生物にも胎生の種はあり、なんと爬虫類では約20%の種は胎生です。今回は、胎生の爬虫類はどうして出現したのかについてのお話です。

胎生とは?

アブラムシの一種

胎生とは、卵を体内で孵化させて、子供を生む繁殖形態を指します。胎生の動物には、アブラムシやツェツェバエなどの昆虫や、サソリの仲間、硬骨魚類であるウミタナゴ、軟骨魚類であるサメの一部が含まれます。様々な分類群に胎生のものが含まれ、進化の過程で何度も卵生から胎生になる形質を獲得したものと考えられます。

胎生であることのメリット・デメリット

ヤマカガシ

メリット

  • 子供を長期間母親の中で保護して、成長させることにより、子供の生存率を高めることができる。
    (卵生の場合の一例:卵を海水中に放出するマンボウは、生涯に2,3億個の卵を生むと考えられているが、大人に成長するのは概ね2匹。)
  • 産卵場所を探したり、保護したりする必要がない。
    (卵生の場合の一例:卵を生む鳥類では、何日間も巣で卵を温め続けないといけない。)
カナヘビ

カナヘビ(卵生)

デメリット

  • 一度に産める子の数が少ない。
    (卵生の場合は、億単位で生むことも可能)
  • 子供が大きくなるまで母体内で育てるため、妊娠期間が長く母親の負担が大きい。

胎生の爬虫類

マムシ(胎生)

爬虫類のうち20%が胎生です。特に、気温が低い高緯度地域や高標高地域で、胎生の爬虫類が多いことが知られており、それらの種は、卵が低温にさらされるのを防ぐために胎生になったと考えられています。

キノボリトカゲ

樹上性であるキノボリトカゲ(卵生)

一方、熱帯にも胎生の種がいます。もともと動きが遅く、敵に襲われてもゆっくりしか逃げられない樹上性の種が、卵生から胎生に進化する傾向があることが明らかになりました。これらの種はもともと早く動かないため、胎生に進化することで体が重い妊娠期間が長くなっても、それほど天敵からの逃避行動に影響がないと考えられます。それに加えて樹上性であるため、卵を産む場所を探すとなると、わざわざ地上に降りなければならないコストがかかります。こうしたことから、デメリットがメリットを上回ったのではないかとKurita et al. (2020) は考察しています。

[参考文献]
Kurita T, Kojima Y, Hossman MY, Nishikawa K. Phylogenetic position of a bizarre lizard Harpesaurus implies the co-evolution between arboreality, locomotion, and reproductive mode in Draconinae (Squamata: Agamidae). Syst Biodivers. 2020;18:675-687.