襲われても逃げないアブラムシ

2021年3月31日 ALL生物
ソラマメヒゲナガアブラムシを捕食するナナホシテントウの幼虫

暖かい日が増え、虫たちが一斉に活動を始めました。春の陽気とは裏腹に、道端の小さな世界では、食う食われるの死闘が繰り広げられています。今回は、テントウムシに食べられるアブラムシの生存戦略についてのお話です。

テントウムシの幼虫に食べられるアブラムシの様子

道端のカラスノエンドウの新葉の部分を見ると、ソラマメヒゲナガアブラムシが大量に取り付いていました。そのソラマメヒゲナガアブラムシを捕食する復数匹のナナホシテントウの幼虫も見られました。ソラマメヒゲナガアブラムシは、ナナホシテントウの幼虫が来てもほとんど捕食回避行動を取らず、カラスノエンドウに吸い付き続けています。そのため、ナナホシテントウの幼虫は、なんの苦労もなくソラマメヒゲナガアブラムシを捕らえて食べ続けていました。

ソラマメヒゲナガアブラムシを捕食するナナホシテントウの幼虫

急激に大量に増え、天敵によく食べられるアブラムシ

ナナホシテントウの幼虫

アブラムシは、単為生殖ができ、メスが自分と全く同じ遺伝子を持った個体を交尾することなく次々と生みます。しかも、生まれてくる子供は、自分と同じ遺伝子を持っているのでまた単為生殖できるメスばかりです。このため、生存に適した気候になると、有性生殖することによる時間的ロスを省いて爆発的に増えることができます。一方で、体が堅い殻で覆われることもなく、動きも鈍いためとても捕食されやすい生物でもあります。このため、アブラムシを食べる昆虫は、ナナホシテントウやナミテントウに加えてクサカゲロウやヒラタアブの幼虫などたくさん存在します。

天敵に襲われても逃げないアブラムシ

ソソラマメヒゲナガアブラムシ

ソラマメヒゲナガアブラムシ

自分が食べられそうになっているにも関わらずほとんど逃げないなんて、とても不思議に感じられるかもしれません。しかし、これもアブラムシの生存戦略と考えることができます。

アブラムシは、個々が天敵から逃げ惑ったり堅い殻を持って防衛する戦略を取るより、捕食回避のための労力をほとんど払わず、数匹が犠牲になっても、自分の集団の誰かが植物を吸い続けられる時間を長くし、集団として早く成長し、次の個体を生む戦略を取っていると考えられます。たとえその戦略で自分が生き残れなかったとしても、同じ場所に集まる個体同士は、母親が同じであることが多く、同じ母から単為生殖で生まれた姉妹も自分と全く同じ遺伝子を持っているため、そのうちの誰かが生き残って大量に子孫を残せば、自分が生き残って子供を作るのと同じ成果になるのです。そのため、姉妹や母親の命は自分の命と同等であり、自分が食べられることによって姉妹が成長する時間と機会を与えられるのであれば、アブラムシがそのような戦略をとっても理論的にはおかしなことではないと言えるのです。