ハチといえは、どんな生き物を想像するでしょうか。花の周りを飛び回る可愛らしい虫でしょうか。それとも、カブトムシを取りに行ったら横にいるちょっと怖い虫でしょうか。私達がよく思い浮かべる針を持ったハチは、実はハチの仲間の一部に過ぎません。今回は、ハチがどのようにして毒針を持つようになったのかについて、詳しくお話したいと思います。
ハチの仲間の過半数の種が寄生バチ
ハチ目は、ハバチ・キバチ類、寄生バチ類、有剣類の大きく3つに分けられます。ハバチ・キバチ類は、幼虫が、植物の葉や材木を食べます。寄生バチ類は、幼虫が、他の昆虫に寄生してその肉を食べます。有剣類は、基本的には親が食べ物を子供に用意します。幼虫の食べ物は、他の昆虫の肉や花粉、花の蜜など種によって多様です。私達が、「ハチ」と言われてまず思い浮かべるミツバチやマルハナバチ、スズメバチなどは有剣類のハチですが、有剣類の仲間はハチ目全体の中でほんの3割ほどです。ハチ目の半分以上の種数をしめるのが、寄生バチの仲間です。ちなみにハバチ・キバチ類は、ハチ目の種の中で2割ほどです。
ハチはなんのために針をもっているの?
有剣類のハチは、ハチ目の中で進化的にはもっとも新しく進化した分類群です。キバチ・ハバチ類が最も古い分類群であり、もともとハチの幼虫はアゲハチョウやキクイムシと同じように、植物の葉っぱを食べたり、材木を食べたりしていました。その中から、他の昆虫に寄生してその昆虫の肉を食べる種が現れました。それらが、寄生バチです。寄生バチは、寄生先の昆虫の体の中に卵を産み付けるために、産卵管を細く長くしました。しかし、この産卵管には、基本的には毒を注入する機能はありません。例えば、土の中に卵を産み付けるために長い産卵管をもっているコオロギやキリギリスと同じです。
この寄生バチの中から、今度は、産卵管を毒針として用いて、獲物を仕留め、その獲物を子供に用意するものが現れました。これが有剣類です。この有剣類の中で、植物食(幼虫の餌は花粉や花蜜)に戻った分類群がハナバチ類です。
つまり、ハチの毒針は、もともと別の昆虫(宿主)に卵を産み付けやすくするために長くなった産卵管です。その産卵管が、獲物を捕らえるための毒針に使われるようになり、その毒針を敵の撃退にも使うようになったものが、ハチの毒針なのです。