ピーナッツはラッカセイとも言い、日本でもよく親しまれた食べ物です。普段食べているピーナッツは植物のどの部分であり、どのように育つか知っているでしょうか。今回は、ちょっと変わった実り方をするラッカセイについてのお話です。
ラッカセイとは?
マメ目マメ科ラッカセイ属の一年草です。原産地は南米で、江戸時代に日本に渡来しました。紀元前2500年頃のペルーの遺跡から、ラッカセイの殻が出土しており、かなり古くから人に利用されてきたと考えられます。
ラッカセイって何?
我々が食べるラッカセイは植物のどの部分でしょうか。ラッカセイの外側の硬い殻は独特ですが、その内側には豆が入っているので、素直に見れば種子だと分かるかもしれません。しかし、ラッカセイが土から掘り起こされることを知っている人はちょっと迷うのではないでしょうか。実は、ラッカセイは土の中で実をつけるちょっと風変わりな豆科植物なのです。ラッカセイ(落花生)というのは、花が下に向いて落ちて、その後その柄が地中に潜っていく様子から名付けられたと考えられます。
ラッカセイの実が土の中でできる意味
一般的に植物は種子を地上で作ります。それは、種子を遠くに分散するためです。例えば、タンポポは種子に綿毛を持ち、風の力を利用して種子を遠くに飛ばします。サクランボやカキは果実を鳥や動物に食べてもらうことで、種子を母樹から離れたところにまで分散します。そのことによって、自らの子孫が新たな生息適地に侵入する機会を獲得したり、母親個体が病気をうつすリスクを下げたりすることができます。
一方、種子には新しい個体を成長させるために沢山の養分が蓄えられているため、動物にとっては格好の食べ物となります。リスやネズミのような哺乳類や、ゾウムシやガの幼虫のような昆虫のように、種子を食べる動物も沢山います。そのような動物から食べられることを防ぐには、土中に種子を隠してしまうというのは有効な手段といえます。しかし上記に書いたような種子を遠くに散布することのメリットは得られなくなってしまいます。ラッカセイのような繁殖様式は、環境があまり変化せず長期に渡って適した環境が存続し、かつ病気があまり流行らないような環境に育つような植物でないとデメリットが大きいと考えられます。
ラッカセイの子房柄が土に潜っていく様子
多くの花は花弁の付け根あたりにある子房や胚珠が開花後、果実や種子になりますが、ラッカセイの場合、花弁の付け根ではなく子房柄というものが伸びて、土の中に潜り、その先端に実ができます。
実が作られるには、子房柄の先に光が当たらず、子房に水が供給され、土の抵抗を子房柄が感知してエチレンを出すことが必要であることがわかっています。
【参考文献】
日本植物生理学会 みんなのひろば 植物Q&A ラッカセイはなぜ土に潜るの? https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2464 ( 2021.9.8)