アリに擬態する生物には、クモやカマキリなどがいますが、カメムシの仲間にもアリに擬態する種がいます。今回は、幼虫がアリに見えるホソヘリカメムシのお話です。
ホソヘリカメムシとは?
カメムシ目ホソヘリカメムシ科のカメムシです。成虫は、羽を閉じていると細長いカメムシに見えますが、羽を広げると腹部背中側の黄色と黒の縞模様が見えます。これはハチに擬態しているものと考えられています。
幼虫は、5齢まであります。終齢幼虫は1cmを超える大きさになりますが、幼虫期間を通じて形態や動き方がアリに似ています。特に若齢のものは、色も黒く、体型も細長いため、よりいっそうアリに似ています。
驚かすとすばしっこく動くアリグモの仲間に比べると動きが緩慢ですが、動き方はアリにそっくりです。
どこで見つかるの?
ホソヘリカメムシは、中国、朝鮮半島、台湾、日本、マレー半島に分布し、国内では北海道から南西諸島まで生息します。食草は、幼虫、成虫ともにマメ科の植物で、エンドウやダイズなどを加害することがあります。また、イネ科やバラ科、ヒルガオ科、ミカン科にもつくことが知られています。幼虫の食草は、成虫と同じですが、親は食草に卵を産まないため、移動能力のない1齢幼虫は何も食べずに2齢になり、2齢幼虫はオスが出す集合フェロモンを頼りに食草にたどり着きます。1齢幼虫を食草で見かけることがほとんどないのは、このためである考えられます。ホソヘリカメムシが卵を食草に産まないのは、食草にいるホソヘリカメムシのオスが出す集合フェロモンに寄ってくる寄生蜂に卵を産み付けられるのを防ぐためだと考えられています。
どうしてアリに擬態しているのか
ホソヘリカメムシがどうしてアリに擬態しているのかについてはよくわかっていません。ホソヘリカメムシはカメムシ特有の臭いを持たないことから、臭いを作る変わりにアリに擬態することによって捕食者から身を守っているのかもしれません。少なくともアリに擬態したクモは、鳥や爬虫類、両生類、他のクモなどの天敵からの捕食を免れやすいことが知られています。