ハトをぼーっと見ていてやっぱり気になるのは、その歩き方ではないでしょうか。あの首を振りながら進むヘンテコな歩き方は、ハトにとっては大きな意味があるようです。また、ハトはピジョンミルクと呼ばれるミルクのような液体をヒナに与えて子育てをします。前回に引き続きハトのお話。今回は、その不思議な生態についてです。
この記事の目次
どうしてハトは首を振って歩くのか?
ハトは首を前後に動かしながら歩きます。どうしてそんな頭がクラクラしそうな歩き方をするのでしょう。ヒトは、なにかを注視しながら体を動かすとき、眼球を動かすことで同じものに焦点を合わせ続けることができます。ところが、鳥は眼球をあまり動かせないため、何かを見ている間、頭全部を動かさないようにする必要があるようです。地面の餌を探索する際、ハトは瞬間的に頭を前に出し、頭を静止させ、体を後から持ってくることで、頭が静止している時間を作りながら歩いているのだと考えられています。この動きを高速で繰り返すと頭を振って歩いているように見えるのです。
このような動きは、実はハトだけではなく、地面で餌を探すニワトリやセキレイなど他の鳥類でも見られます。
ピジョンミルクって?
ハトはミルクを作ってヒナに飲ませると聞いたことがあるかもしれません。しかし、鳥類であるハトは、哺乳動物のように母乳を生産するための専用の器官は持っていません。鳥類の多くは、食道の中間部分に「素嚢」と呼ばれる食べ物を一時的に貯蔵しておく器官を持っています。ハトの仲間は、この素嚢の内壁を削ることによってピジョンミルクを作ります。素嚢の内壁は、ヒナが生まれる時期には、通常時の20倍以上に厚くなります。メスだけでなく、オスもピジョンミルクを出すことができます。ピジョンミルクは、薄い黄色をした粘り気のある液体です。乳糖は含まれませんが、タンパク質や脂肪の含有量が哺乳動物の母乳よりも高く、カルシウム、リン、カリウムなどのミネラルも含まれます。ハトのヒナは、孵化して1週間はピジョンミルクだけで育ちます。この間、親鳥はピジョンミルクに固形物が混じらないように絶食します。その後、孵化後2週間まではピジョンミルクが含んだ餌を与えられます。昆虫をヒナの餌とし、昆虫発生時期に子育てのシーズンが限られる鳥と比較すると、ハトの子育ての方法は、そのシーズンが限定されない利点があります。一方、ピジョンミルクを作ることができる量が限られるため、一度に2羽ほどしか育てることができないというデメリットもあります。
[参考文献]
柴田佳秀. (2022). となりのハト 身近な生きものの知られざる世界. 山と渓谷社.