ツバメはめちゃくちゃ群れる

2022年8月17日 ALL生物

ツバメは、ハトやスズメと異なり、単独で行動しているのを見かけることが多いと思います。ところが、実は特に子育てが一段落した夏の中盤頃から、毎晩、巨大な群れを作って眠ります。今回は、普段の生活であまり見ることがないツバメのねぐらについてです。

ツバメのねぐらとは?

つばめのねぐら

ツバメのねぐら

ツバメのねぐらとは、彼らが夜間に過ごす場所のことを指します。あたりが真っ暗になる直前にねぐら入りし、あたりが白みだした途端にねぐらから出ます。日本に飛来直後の春、子育てを始める前にもねぐらを利用しますが、規模は夏ほどではありません。卵を産むと抱卵のために、卵がかえってからも、ヒナが大きくなるまでは親鳥は巣で過ごします。ヒナが大きくなり、巣が狭くなると、親鳥は巣の周辺で夜を過ごすようになります。

ツバメ

子育てが終わると、親鳥に巣立った雛も加わって集まってねぐらで寝るようになります。大きなねぐらでは、数万匹のツバメが集まります。

どんな場所をねぐらにするのか。

ヨシ

ヨシ

ツバメは、ヨシが群生するヨシ原をねぐらとして利用します。ヨシ原が形成される湿り気がある環境には、ガマやカヤツリグサなどの植物も群生することがありますが、好んでヨシを選んで集まるようです。また、面積が10,000㎡以上のヨシ原でのみ、10,000羽以上の大規模なツバメのねぐらが形成されると報告されています。しかし、10,000㎡以上のヨシ原でもその全部をねぐらとして利用するのではなく、その半分から10分の1にも満たない範囲のみをねぐらとして利用することも多いようで、積極的に狭い範囲に集まって寝ていることが推察されます。なお、ヨシ以外にもセイタカアワダチソウやトウモロコシ畑、低木林にねぐらを作ることが観察された例もあるようです。

どうしてヨシ原をねぐらとして好むのか。

ツバメのねぐら入り

ヨシは高さ3mくらいになる植物で、ツバメはその穂の部分や、上方の葉っぱの付け根に止まって休みます。ヨシは湿地に生育する植物であるため、ヨシ原の中は他の場所よりもずっと涼しいです。また、地面がぬかるんでいるため、イタチやネコなどツバメを捕食する哺乳動物が侵入しにくい環境であると考えられます。加えて、細く簡単にしなるヨシは、ヘビや哺乳動物にとってツバメに気付かれないように登るのが難しい植物と考えられ、ヨシ原はツバメにとって捕食者に襲われにくい安全な場所といえそうです。ツバメの体が小さく軽いことは、ねぐらとしてヨシ原を選ぶことができた重要な要素になっていると考えられます。また、ヨシと似たオギよりもヨシを好む理由については、ヨシのほうがオギに比べて湿り気のある環境を好む傾向があることや、葉の付き方が異なることによる止まりやすさの違いが影響しているのではないかとも考えられています。

ツバメがねぐらを作る理由

ねぐら入りするツバメ

ツバメがこれほどの大群になってねぐらを作る理由はよくわかっていません。大群になることによって、各々の個体は捕食者から狙われにくくなる、もしくは、捕食者の存在に気づきやすくなるため、捕食回避が目的ではないかという説があります。しかし、この理由のみであるとすると、他の多くの鳥にも同様のことが当てはまるため、十分な説明とはなりません。一方、多くの個体が集まって情報交換をしているのではないかという説もありますが、こちらはなかなか検証するのは難しいと考えられます。

次回は、実際のツバメのねぐら入りの様子を紹介します。

[参考文献]

岡口晃子 & 辻野亮 (2016) 奈良市平城宮跡におけるツバメの集団ねぐら利用の季節変動. 奈良教育大学自然環境教育センター紀要, 17: 35–48.