数万羽のツバメのねぐら入り

2022年8月24日 ALL生物

前回に引き続き、ツバメのねぐら入りについてです。実際の様子について詳細に記述します。奈良の平城宮跡で観察を行いました。

ツバメのねぐら入りの様子

観察日 2022年8月9日

18:45 ちらほらとツバメが飛び始めた。↓
つばめのねぐら入り
18:50 100羽ほどが低空飛行を始めた。

19:00 数千のツバメが飛び、地上と平行に低空飛行するものが多い。↓

19:03 数千から数万のツバメで頭上まで覆われた。この日の最大飛行数と思われる。数分前に比べて空の高いところを飛んでいる個体が増えた。↓

また、空一面からツバメの鳴き声が聞こえた。↓

19:07 木の葉が舞い散るようにひらひらと降下してくる個体が多数現れ、急激に上空のツバメが減り始めた。同時に、地上がツバメの鳴き声でにぎやかになった。↓

19:20 あたりは暗くなり、飛行するツバメはほとんどいなくなった。

つばめのねぐら入り

ねぐら入りの際のツバメの飛び方の特徴

ムクドリのねぐら入りと異なり、ツバメは、そこに集まった個体すべてで動きを同調させるわけではないようです。しかし、進行方向が同じゆるやかな集団がいくつか形成され、それぞれの集団がある程度のまとまりをもって飛び回っているように見えました。なにかの拍子に、ほとんどの個体が同じ方向に飛ぶ瞬間もありましたが、少なくとも今回の投稿では大きな環境変化(風や強い光、大きな音など)を感じることはなく、集団の移動の方向が何によって決定されているのかはわかりませんでした。ゆるやかな集団についても、個体間の間隔が広く、集団から外れる個体もかなりいるため、明瞭なグループはほとんど見られず、ヨシ原上空のツバメの密度はどこでもほとんど均等に見えました。

ヨシ原上空を飛ぶツバメ

ヨシ原上空を飛ぶツバ

飛行高度も同じ時刻に高い個体と低い個体が混在しましたが、はじめの数分は、比較的低いところを飛んでいるものが多く、終盤になるにつれて高度を上げる個体が多いように思われました。終盤、急降下して、ヨシの茎や葉の付け根に着地する個体が現れると、一気に着地個体が増えました。落ち葉が落ちるように上空から急降下してヨシに着地するものが目立ちましたが、ヨシ原すれすれを水平飛行した後にとまる個体もありました。ツバメが飛び始めて約15分後には最大飛行数となり、30分も経過しない間に、ほぼすべての個体がヨシ原に着地しました。ちなみに、これほどの大群のツバメが頭上を飛んでいましたが、糞は一切落ちてきませんでした。

増加傾向にある奈良の平城宮跡のツバメ

平城宮跡にあるツバメのねぐらに集まるツバメの数は、6万羽ほどと推定されており、近年増加傾向にあると言われています。その理由は、今までねぐらとして利用していたヨシ原がなくなり、より遠方からツバメが集まるようになったからではないかと考えられています。観察されるツバメが近年増えたとだけ聞くと、ツバメの数が増えたのかと思ってしまいますが、実はそうではないようです。ツバメにとって住みやすい環境が、失われつつあるのかもしれません。