ウサギ目の動物は、日本には、ニホンノウサギ、エゾユキウサギ、エゾナキウサギ、アマミノクロウサギの4種が生息していますが、アマミノクロウサギは、世界でも日本の鹿児島の奄美大島、徳之島のみにしか生息しないウサギです。
アマミノクロウサギとは?
アマミノクロウサギ Pentalagus furnessi は、ウサギ目ウサギ科アマミノクロウサギ属に属する唯一の種です。体は真っ黒で、耳が短かく、後ろ足も短いため、一般的なウサギとは見た目が大きく異なります。頭胴長は40〜50cm、体重は1.3〜2.7キロほどです。よく日本で飼われているカイウサギと同じか少し小さいくらいの大きさです。
アマミノクロウサギは、世界で、奄美大島と徳之島にのみに生息します。活動時間は主に夜。林内や草原で、ススキの葉、スギの樹皮、スダジイの実、タケノコなど、様々なものを食べます。巣は広葉樹林の中につくります。
どうして奄美大島と徳之島だけにいるのか
アマミノクロウサギは、一属一種であり、同属の近縁種が現存しません。しかし、170万年前〜130万年前、及び約40万年前の沖縄の地層から、別種のアマミノクロウサギ属の動物の化石が発見されています。また、祖先種は、東欧やユーラシア大陸で見つかっています。このことから、もともとは広い地域に分布していたアマミノクロウサギと似た形質を持つ近縁種や祖先種が、別の種との競争や、天敵からの捕食によって分布域を縮小したと考えられます。
一方、アマミノクロウサギは、その祖先種が奄美大島や徳之島に侵入後、温暖化による海面の上昇に伴いそれらの島に隔離されました。島が大陸から切り離された後、大陸で広がった競合種(耳や後ろ足が長く、天敵から逃げるのに適した形態を持った種)がそれらの島には入らず、また、大陸に生息する天敵も入ってこなかったため、アマミノクロウサギはそれらの島々で生き残ったと考えられています。このような固有種は、隔離された島で独自に進化したことによって生まれた「新固有種」に対して、もともと広く分布していたものの、他の地域と分断された場所でのみ絶滅を免れた種であり、「遺存固有種」と呼ばれます。
次回は、アマミノクロウサギと他のウサギの形態や生態の違いに着目し、ウサギの長い耳や後ろ足の役割について考えます。