普通、「パンダ」というと、白と黒のもこもこでお馴染みのジャイアントパンダを指します。ところが、「パンダ」はもともとレッサーパンダにつけられた名前でした。どうしてジャイアントパンダがパンダを襲名することになったのでしょう。
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レッサーパンダとは?
レッサーパンダ Ailurus fulgens は、食肉目イタチ上科レッサーパンダ科レッサーパンダ属の動物です。レッサーパンダ科は、8属に分類される複数の種が存在していましたが、現在レッサーパンダ科に属する動物は、レッサーパンダのみです。レッサーパンダはネパール、ブータン、インドに生息するネパールレッサーパンダ Ailurus fulgens subsp. fulgensと中国南部、ミャンマー北部に生息するシセンレッサーパンダ Ailurus fulgens subsp. styani の2亜種に分類されています。いずれも、冬には雪が積もる、標高1800〜4000mに生息します。
パンダだったレッサーパンダ
レッサーパンダがヨーロッパに紹介されたのは、1825年。生息地のヒマラヤでは「タケを食べる者」の意味で「ニヤラ・ポンガ」と呼ばれていました。これが「パンダ」の語源であると言われています。
1869年、ジャイアントパンダがヨーロッパに紹介されました。はじめはジャイアントパンダは、パンダ (レッサーパンダ)の近縁だと思われたことから、パンダ(レッサーパンダ)より大きなパンダという意味で「ジャイアントパンダ」と名付けられました。
しかし、近年の分類では、レッサーパンダは食肉目イタチ上科レッサーパンダ科の動物とされています。イタチ上科には、スカンク科、イタチ科、アライグマ科が含まれます。一方、ジャイアントパンダは、食肉目クマ科ジャイアントパンダ属の動物です。つまり、レッサーパンダは、ジャイアントパンダよりは、スカンクやイタチ、アライグマなどと近縁です。また、イタチ上科は、クマ科よりも、アシカ科やアザラシ科などが含まれるアザラシ上科と近い関係にあります。つまり、レッサーパンダとジャイアントパンダは、近年の分類では、かなり遠い関係にあるとされています。
その後、ジャイアントパンダの人気が高まり、知名度が上がるにつれ、パンダといえばジャイアントパンダを指すようになりました。そのため、はじめにパンダという名前がついていた動物にlesser「小さい方の」という語をつけて、レッサーパンダと呼ぶようになりました。なお、近年、海外では、体色が赤っぽいことからレッサーパンダをレッドパンダ red pandaと呼ぶことが多いようです。
ちなみに、ジャイアントパンダとレッサーパンダは、上記のように分類から考えると遠い関係ですが、2種とも標高1000m以上の竹林に棲み、主にタケを食べて過ごすという食肉目としては珍しい習性を持った動物です。この特異な生態が共通しているという面から考えると、この2種を大小に分けて共通の名前で呼ぶのはそれほど不自然ではないといえるかもしれません。