ヤドリギが高い木の上に寄生する方法
前回はヤドリギがなぜ高い位置に寄生するのかについてお話しました。では、ヤドリギはどうやって高所に寄生するのでしょう。
この記事の目次
どうやって高い場所に寄生するの?
多くの動物と異なり、植物は自ら動くことができません。多くの植物にとって移動するチャンスは生活史の中で2度だけです。それは送粉(花粉)と種子散布(種子)です。ヤドリギは、種子散布を鳥に託します。鳥はヤドリギにとって都合の良い場所に種を運んでくれます。
ヤドリギ Viscum album は2〜3月に花を咲かせ、10月〜12月頃に実をつけます。種子は粘着性のある果肉に包まれており、鳥の消化器を通過して排泄されるまでその性質を失いません。
そのため、鳥がヤドリギの実を食べると鳥のお尻から粘着物質が垂れ下がり、その中に数個の種がくっついた状態になります。鳥は、種子入の粘着物質を糸のように10cmも20cmもぶら下げたまま木の上に止まったりするため、種子は、地面にそのまま落ちるのに比べてずっと木の幹にくっつくチャンスが増えると考えられます。
ヤドリギの種子を運ぶ鳥
ヤドリギの実を好む鳥として有名なのは、キレンジャクBombycilla garrulus、ヒレンジャク Bombycilla japonicaです。どちらも冬鳥で、群れで行動し、混群を作ることもあります。なぜか日本にたくさん訪れる年とほとんど訪れない年がある不思議な生態をもった鳥です。
キレンジャクとヒレンジャクは、特にヤドリギの実を好みます。これらの鳥を見つけたければヤドリギを探せと言われるほどです。キレンジャク、ヒレンジャクがやってきた年には、群れになって次々とヤドリギに押し寄せます。その場のヤドリギの実をほとんど食べ尽くすと、他のヤドリギのある場所に次々と移動してまた食い尽くしてくというような採食を行います。すでにヤドリギが生育している環境は、ヤドリギにとっての生育適地である可能性が高いです。そのため、ヤドリギの実にターゲットに絞って採餌行動をおこなう鳥に散布してもらうことにより、効率的な種子散布が期待されます。
ヒヨドリもヤドリギの実を食べることが報告されていますが、レンジャク類ほども好んで食べないと考えられています。そもそもヒヨドリはいろいろな果実を食べるため、先述の理由により、ヤドリギにとってレンジャク類ほども好ましい種子散布者ではないと考えられます。
日本のヤドリギは、レンジャク類がやってきてくれる年をバードウォッチャーよりも心待ちにしている違いありません。