どうして新葉は赤いのか?ー新葉が緑色ではない理由ー

2023年4月30日 生物

春は多くの植物が一気に芽吹く時期です。その中には赤い新葉が目立つ植物もたくさんあります。どうして、これらの植物の新葉は緑色ではないのでしょうか。

遅延緑化とは?

遅延緑化

ツバキの新葉

新葉が緑色以外の色を呈する現象は、delayed greening (遅延緑化)と呼ばれ、光合成に必要なクロロフィル(緑色の色素)が新しい葉で合成されるタイミングが遅れるために生じる現象を指します。そのため、遅延緑化が生じた植物の新芽は、赤だけでなく、青、白、黄、薄緑色になるものもあります。

どうして新葉を緑色にするのを遅らせるのか?

新葉の赤い葉にクロロフィルがないのは見てよくわかりますが、遅延緑化する植物の新葉は、窒素などの投入も遅れます。

ヒトもタラの芽やコシアブラの新葉を食べるように、葉は一般に新葉のときは柔らかく、古くなるにつれて硬くなります。成熟して硬くなった葉が食べにくいのは、昆虫や病原菌類、他の哺乳動物にとっても同じです。つまり、葉を食べる動物はこぞって新葉を狙って食べようとする傾向が強いと考えられます。若い葉は、成熟した葉の5〜100倍の被害を受けるという報告もあります。植物からすると、はじめからたくさん栄養の入った新葉を食べられるとロスが大きいため、葉が硬くなるまでは栄養を少なめにしておくという戦略をとっているのではないかと考えられています。

遅延緑化によるデメリット

緑化遅延

アセビの新葉

一方で、遅延緑化する植物は、展葉期に光合成に利用できる最大の光量のうち18〜25%しか吸収できないのに対し、遅延緑化しない植物では77%〜80%を吸収できるという報告があります。遅延緑化は光合成のチャンスを逃すというデメリットを伴うようです。

[参考文献]
Dominy NJ, Lucas PW, Ramsden LW, Riba-Hernandez P, Stoner KE & Turner IM (2002) Why Are Young Leaves Red ? Oikos, 98(1): 163–176.
Kursar TA & Coley PD (1992) Delayed Greening in Tropical Leaves : An Antiherbivore Defense ? Biotropica, 24(2): 256–262.
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