親戚かと思ったらそうじゃなかったハスとスイレン

2023年8月27日 生物

ハスとスイレン、漢字で書くと蓮と睡蓮。いずれも水面で見られ、大きな花を咲かせます。葉は丸くて大きい点も同じです。でも、実は系統的に全く異なる植物です。今回は、ハスとスイレンの違いについてのお話です。

系統的に全く異なるハスとスイレン

ハスとスイレンの系統的位置関係

APG体系に基づく系統樹:スイレンとハスは系統的に離れている。

ハスは、ヤマモガシ目(Proteales)ハス科(Nelumbonaceae)ハス属 (Nelumbo)の植物です。一方、スイレンは、スイレン目(Nymphaeales)スイレン科(Nymphaeaceae)スイレン属(Nymphaea)の植物です。

ハス科とスイレン科はともに1950年代から1960年代にかけて提唱された新エングラー体系ではキンポウゲ目に、1980年代に提唱されたクロンキスト体系ではスイレン目に入れられ、昔は近縁であると考えられていました。

しかし、1990年代以降に発展してきた分子系統解析に基づくAPG体系では、ハス科はヤマモガシ目に、スイレン科はスイレン目に分類されるようになりました。両目は系統的に遠い関係にあります(上図)。スイレン目は、被子植物の中でも初期に分かれた分類群で、被子植物が単子葉類と真正双子葉類に分かれるより前に分岐した植物です。一方、ハスが含まれるヤマモガシ目は真正双子葉類に含まれます。

ハスとスイレンの見分け方

ハスとスイレンは花や種子にも違いがありますが、葉も異なります。ハスは、水面よりも上に葉を持つ傾向があります。

ハス

ハス:葉が水面より上にある。また、葉に切れ込みがない。

一方、スイレンは、葉が水面に浮かぶようにつくため、すべての葉が水面に張り付いたように見え、通常葉の裏側が見えることはありません。

スイレン

スイレン:葉が水面に張り付いている。また、葉に切れ込みがある。

また、ハスには、葉に切れ込みがありませんが、スイレンには、葉に切れ込みがある点も異なります。

ハスとは?

ハス

ハス

ハス Nelumbo nuciferaは、ヤマモガシ科ハス科ハス属の多年草です。なお、ハス科にはハス属のみが含まれ、ハス属含まれる現生種はハスと北米原産のキバナハスのみです。ハスの原産地は、インドですが、アジア、オーストラリアに帰化しています。池や沼などの岸に沿って自生します。花期は7月〜8月です。種子の生存期間が非常に長いことで知られており、2000年前の種子が発芽した例があります。地下茎はおなじみのレンコン、種子は餡に加工されお菓子に利用され、花は蓮茶として飲用され、茎も煮物や炒め物などにして食べられます。

スイレンとは?

スイレン

スイレン

スイレンは、スイレン目スイレン科スイレン属の植物の総称であり、一種の植物を指す名ではありません。なお、スイレン目はこの1科1属のみが含まれます。スイレン属は世界に50種ほどあり、日本在来の種はヒツジグサ Nymphaea tetragona のみです。スイレン属の植物は、アフリカ、ユーラシア、南北アメリカ、オーストラリアの熱帯から温帯の流れの緩やかな河川や湖沼に生育します。花期は5月から10月で、観賞用に多くの栽培品種が作り出されています。日本では明治時代に外国産のスイレンが栽培されるようになりました。スイレンはアルカロイドを含んでいる場合があるため、食用にされることは稀です。