こんなに違っても同じ種:エビガラスズメの幼虫
サツマイモ畑で見つけた大きなイモムシ、2種見つけたと思ったら実は同じ種でした。エビガラスズメの幼虫は驚くほどの色彩変異を持っています。
エビガラスズメとは?
エビガラスズメ Agrius convolvuli は、チョウ目スズメガ科の昆虫です。世界では、ヨーロッパ、アフリカ、東南アジア、オーストラリアなどに分布し、日本では全国の平地から山地で見られます。幼虫は、ヒルガオ科、マメ科、ゴマ科、ナス科の植物を食べます。サツマイモにもよく付きます。成虫は、夜行性で灯火に集まります。
エビガラスズメの幼虫の色彩変異
エビガラスズメは、緑色、褐色、黒色のものがいることが知られています。また、緑色といってもほとんど全身が緑色にみえるものから、黒い縞模様が目立つものがおります。褐色や黒色のものにも複雑な柄が入ったものから、柄が目立たないものがいます。全身の色だけでなく柄も非常に変異が大きく、同種とは思えないほどのばらつきがあります。
色彩変異を起こす要因
エビガラスズメの幼虫を他個体が周囲にたくさんいる環境で飼育した場合、体色が黒っぽくなります。また、30℃以上で飼育した場合、黒色個体が茶褐色になることが報告されています。このような、個体密度や気温による体色の変化は、トビバッタの仲間でよく知られています。サバクトビバッタやトノサマバッタも高密度になると黒化します。
どうして黒化するのか?
サバクトビバッタの場合、群生相の黒化個体は毒を持ちます。孤独相の緑色とは大きく異なる黒色の体色を有することで、天敵の鳥などに対して自分には毒があると警告している可能性があります。個体数が増えると隠蔽色としての緑色はほとんど役立たなくなり、毒と警告色で捕食を免れる戦略に変えるのかもしれません。(サバクトビバッタは、警告色に加えて、警告臭も分泌することが確認されています。)エビガラスズメの黒化の役割は分かっていませんが、もしかするとサバクトビバッタと同様に捕食回避に関わっているのかもしれません。
[参考文献]
- 蚕糸・昆虫農業技術研究所・遺伝育種部・発生分化研究室. “エビガラスズメ幼虫の体色変異を利用した幼若ホルモンの高感度バイオアッセイ系”. available at: https://www.naro.affrc.go.jp/archive/nias/seika/nises/h07/nises95005.html.
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Wei, J., Shao, W., Cao, M., Ge, J., Yang, P., Chen, L., Wang, X., and Kang, L. 2019. Phenylacetonitrile in locusts facilitates an antipredator defense by acting as an olfactory aposematic signal and cyanide precursor. Sci. Adv. 5: eaav5495. doi:10.1126/sciadv.aav5495.