ケラの卵で育つミイデラゴミムシ

2024年7月25日 生物

前回、ミイデラゴミムシのおならについてお話しましたが、本種の幼虫の間はケラの卵しか食べないという変わった生態も持っています。今回は、ミイデラゴミムシの生活史についてのお話です。

ミイデラゴミムシの餌と生活場所

ミイデラゴミムシ Pheropsophus jessoensis は畑地、草地、林縁、水田などの土壌の湿り気の高い場所に生息します。現在のところ、ミイデラゴミムシの幼虫の餌資源になると知られているのはケラ科の卵のみです。日本に生息するケラ科の生き物は、ケラ Gryllotalpa orientalis 一種のみです。そのため、ミイデラゴミムシの生息場所はケラがいる場所付近に限定されると考えられます。成虫の餌は昆虫やミミズなどです。

ミイデラゴミムシの生息場所

ミイデラゴミムシが見つかった畑。近くに用水路があり、地面が極度に乾燥することは少ない。

私が、ミイデラゴミムシを見つけた場所は、じゃがいもを掘って数日経った地面がむき出しになった場所でした。ミイデラゴミムシに近づくと、頭を土のくぼみに突っ込んで、頭隠して尻隠さずの状態でしばらくじっとしていました。おしりの武器を有効に使うための臨戦態勢なのかもしれません。

ミイデラゴミムシの生活史

ミイデラゴミムシ

ミイデラゴミムシの顔

以下に、島根県で行われた飼育条件下での観察結果(林 2024)を紹介します。

ミイデラゴミムシは6 – 7月に産卵・孵化します。孵化からおよそ2週間で3齢(終齢)幼虫となりますが、幼虫の全期間、ケラの卵室でその卵を食べ続けます。幼虫はイモムシ状で、頭部に横に開く牙がついており、ケラの卵に頭を突っ込んで採餌します。

ケラ

ケラ

ケラは一つの卵室に30個前後の卵を産みますが、ミイデラゴミムシの幼虫が食べる卵は22-25個です。ケラの卵塊1つにつきミイデラゴミムシの幼虫は1個体のみ育つので、ミイデラゴミムシに侵入されたケラの卵室でも数匹のケラが育つことができる可能性があります。ミイデラゴミムシはその後、9-11日ほどケラの卵室内で蛹で過ごし、孵化から3-4週間成虫になります。冬は成虫で越します。

【参考論文】
林, 成多 (2024) 日本の寄生性ゴミムシ概説. ホシザキグリーン財団研究報告, 27: 119–136.