穴だらけの竹箒とかけまして、財布の紐と解きます
そのこころは?
どちらも握っていたいでしょう。
タイワンタケクマバチの巣
逆さに立てかけてあった竹製の熊手の節のすぐ上に大きさ10mmほどの穴が空いていました。中には、タイワンタケクマバチ Xylocopa tranquebarorum がいました。タイワンタケクマバチは近年日本で急速に分布を広げている外来のクマバチの仲間です。
巣が作られた竹の節間は20cmほどです。巣が確認された節について、多くは穴が1つのみでしたが、例外的に向かい合って2つの穴が開けられた節が1つだけありました。多いものだと、熊手一本につき3つの穴が開けられていました。穴は節間の最下部付近に作られており、その上部の空間を一つの巣としているようです。
穴が開けられた竹は、購入してから3ヶ月ほど経った熊手の柄で、太さは直径2-2.5cmほどでした。この熊手の保管場所の近くには、直径1.8cm程の黒竹が何本も生えていましたが、そちらには一切穴はありませんでした。一般的に、タイワンタケクマバチは、多くの場合、枯れた竹を利用することが知られています。外側をビニールでコーティングしてある竹の柄にも、穴が空けられました。一方で、同じところに置いてあった劣化が進んだ古い竹や、直径3cm程のちょっと太めの竹には穴が開けられませんでした。タイワンタケクマバチは、竹の太さや古さなどを吟味して、巣を作っているようです。
巣の内部は、成虫が丸まってちょうど入れるぐらいの長さの部屋に区切られ、6-7匹の子が育つとのことです。
同属キムネクマバチの巣
在来種であるキムネクマバチ Xylocopa appendiculata subsp. circumvolans もちょうど同じ時期に巣を作りますが、こちらは木材に穴を開けます。英名でcarpenter bee(大工蜂)と言われる所以です。タイワンタケクマバチの巣から20mほど離れた家屋の軒にキムネクマバチの巣を見つけました。
穴の大きさは1.5cmほどで、タイワンタケクマバチよりも少し大きいです。穴を覗くと巣の主の顔が見えました。
もともと、空洞になっている竹に穴を開けるタイワンタケクマバチはキムネクマバチに比べると省エネな巣作りといえそうです。タイワンタケクマバチと同様に、幼虫一匹にひとつずつ花粉団子をいれた部屋を作ります。
巣穴からおしりを外に向けるタイワンタケクマバチ
巣の中にいるタイワンタケクマバチにちょっかいを出してみると、逃げることなくおしりを穴の外に向け、指すような仕草をしました。
実際、巣があることを知らずにこの竹箒を握ると刺されます。指をさされた人の話によると、刺された場所が腫れ、2-3時間痛んだとのことです。クマバチは一般に温厚で野外で自分から攻撃してくることはほぼありませんが、子供を守るため、巣が襲われたと感じると逃げずに攻撃することもあるようです。キムネクマバチと異なり、普段人が利用する竹箒の柄が巣に使われるため、タイワンタケクマバチに刺される可能性はキムネクマバチのそれよりも高いかもしれません。