人目も草も枯れぬと思へば、、、ってパンジー咲いとるやん

2024年12月31日 生物

パンジーのおかげで冬でも寂しくないね!

植物が花を咲かせる理由

ハイビスカス

ハイビスカス

植物が開放花(普通の花)を咲かせるのは、同種別個体と花粉をやり取りして有性生殖をするためです。植物の中にはスギ、ヨモギ、ブタクサなど目立たない花を咲かせる植物もいる一方で、パンジーやヒマワリ、ハイビスカスなど、とても目立つ花を咲かせる植物もあります。

ヨモギ

ヨモギの花

前者と後者の違いは、花粉を風に運んでもらう風媒であるか、昆虫や鳥などの動物に運んでもらう動物媒であるかです。動物媒の植物は、送粉者となる生物に花を見つけてもらう必要があるため、しばしば派手な花を咲かせます。そのため、派手な花は花粉を運ぶ生物が活動している時期に咲かせないと何の意味もありません。

パンジーはどうして真冬に咲くの?

パンジー

パンジー

ところが、パンジーは真冬にも咲きます。これはなぜでしょう?

ビオラ

ビオラ: かつては花の大きいものをパンジー、小さいものをビオラとして分けていましたが、近年はどちらともつかない品種も増えています。

パンジー(ビオラも含む)は、4種の原種(サンシキスミレ Viola tricolor、ビオラ・ルテア Viola lutea、ビオラ・コロヌータ Viola cornuta、ビオラ・アルタイカ Viola altaica)から作られた人為作出の品種です。原種は長日植物(限界暗期よりも夜が短くなると花芽形成する植物。冬至から夏至に花芽形成する。)です。また、それに加えて冬の寒さが花芽形成のトリガーとなります。夜の長さと寒さ、それに加えて春の温度上昇のトリガーとを組み合わせることで、原種は春から夏の間に花を咲かせます。ということで、原種はそれぞれの原産地で真冬に咲くことはありません。

園芸種であるパンジーが冬に開花するのは、これらを開花トリガーとする性質を無くしたためです。それにより秋から春にかけて開花させることに成功したのです。

寒さに強いパンジー

いくら冬季に花を咲かせる形質を得たところで、そもそも冬季の寒さで枯れてしまうようでは花どころではありません。

Viola_altaica

ビオラ・アルタイカ Photo by Convallaria majalis, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

4つの原種の中でも、ビオラ・アルタイカはシベリアやモンゴル、中国の高標高地域の非常に寒い地域に分布する種です。パンジーは、このビオラ・アルタイカの形質を引き継いだために寒い冬の屋外で元気に生育し、花を咲かせることができるものと考えられます。

[参考URL]

小杉波留夫 2024.October 15. パンジーの来た道[その2]|東アジア植物記. [Online] Available: https://sakata-tsushin.com/yomimono/rensai/standard/eastasiaplants/20241015_008921.html [2024 Dec. 30].
サカタのタネ 2016.August 18. パンジー・ビオラの真夏の種まき|特集|読みもの. [Online] Available: https://sakata-tsushin.com/yomimono/tokushu/20160818_003627.html [2024 Dec. 30].