2025年9月11日

北陸に行ったらシタベニハゴロモがいた

変わった虫が目の前で飛んだ!と思ったら噂のシタベニハゴロモでした。

シタベニハゴロモとは?

シタベニハゴロモ
シタベニハゴロモ:目の下にある目立つオレンジの突起は触覚

シタベニハゴロモ Lycorma delicatula は、カメムシ目ビワハゴロモ科の昆虫です。原産地は、中国、台湾、インド、ベトナムです。寄生する植物は70種以上知られ、ニワウルシ、センダン、アカメガシワなどの庭木や街路種に加えて、ブドウ、ナシ、ウメ、リンゴなどの果樹の樹液を吸汁する広食性の昆虫です。シタベニハゴロモに寄生された植物は、生育不良になったり、枯死することもあります。また、シタベニハゴロモが排出した大量の甘露のために葉がカビに覆われる、すす病にかかることもあります。

日本にはビワハゴロモ科の在来の昆虫は一種もいません。ビワハゴロモの仲間は、主に熱帯・亜熱帯地域に自然分布します。頭部に特徴的な突起を持つ種や、美しい羽をもつ種も多いため、日本に生息しない割には認知度が高い昆虫でもあります。ビワハゴロモ科は、日本に生息する昆虫の中ではウンカ科に近縁です。

海岸沿いで見つけたシタベニハゴロモ

シタベニハゴロモ

福井の東尋坊近くの海岸沿い、低木とクズが生える割と開けた場所でシタベニハゴロモを見つけました。ウンカ科の昆虫と同様に、捕まえようとするとピョンと跳んでから翅で数メートル先に飛んで逃げます。頭部から羽の先まで2.5cm、開長が4-5cmほどもある上、羽を開くと前翅に隠れていた真っ赤な後翅が見えるため、かなり目立ちます。いかにも南国の昆虫らしい雰囲気があります。

日本に2回侵入したシタベニハゴロモ

シタベニハゴロモ

シタベニハゴロモは、日本では2009年に石川県で初めて報告されました。その後、2013年に福井県、2017年に大阪府、2019年に岡山県、2023年に滋賀県で発見されています。岡山県で確認されたものは、北陸にすでに侵入しているものと遺伝的に異なる系統のものであることがわかっており、少なくとも二度別のルートで侵入したと考えられています。

シタベニハゴロモはアメリカや韓国などにも輸入品に混じって侵入し、急速に分布を広げました。それらの国で見られるような急激な分布拡大は今のところ日本では起こっていません。ただ、岡山に侵入したものはアメリカや韓国に侵入したものと同一の系統であり、かつ岡山は冬の気候が北陸ほど厳しくないため、日本での今後の急速な分布拡大が懸念されます。