スイセン is ナルシスト

2021年3月14日 ALL生物

スイセンは冬に花を咲かせます。花が少ない季節に咲くもんですから、その花は冬の寒空のもとでよく目立ちます。そんなスイセン、ちょっと変わった学名がついています。今回は、スイセンのお話です。

スイセンとは?

スイセン

スイセンは、キジカクシ目ヒガンバナ科スイセン属に属する植物の総称です。世界では、25〜30種が知られていますが、品種改良が盛んに行われ、1万以上の品種が登録されています。スイセン属の仲間の原産地は、地中海沿岸地域からアジア中部です。ニホンという名がつけられているニホンズイセンは、フサザキスイセン (Narcissus tazetta)という種の変種Narcissus tazetta var. chinensisであり、日本原産ではなく、地中海原産のものが中国を経由してやってきたと考えられています。中国から日本にやってきた経緯は、人が運んだのか、海流に乗ってやってきたのか定かにはなっていません。日本に残っているスイセンの最初の記載は、室町時代に作られた辞典です。中国語で水仙と書かれたものを音読してスイセンと呼ばれるようになりました。日本では、関東から九州の海岸で野生化して群生しているものがみられます。

ナルシストなスイセン

スイセンの属名であるNarcissusは、ギリシャ神話に登場する美少年ナルキッソスに由来すると言われています。ナルキッソスは、ナルシシスト(ナルシスト)の語源でもあります。ナルキッソスは、自分に想いを寄せる者に見向きもしなかったため、彼に想いを寄せた者たちは、絶望して姿を失い、声だけの存在(木霊)になったり、死んでしまったりしました。

ナルキッソス Image by Caravaggio, Public domain, via Wikimedia Commons

そのことを知った女神メネシスは、自分しか愛せない呪いをナルキッソスにかけました。ナルキッソスは水面に写った自分の姿に恋をしますが、水面に写った自分がその恋に応えることはなく、水面を見つめ続けた彼は、ついには憔悴して死んでしまいました。そのナルキッソスがいたところにスイセンの花が咲きました。

スイセン
水面に写った自分の姿を覗き込むナルキッソスの姿が水辺で下向きに花を咲かせるスイセンの様子と重なります。