卵から孵ったばかりの小さなカメムシが、集団で葉っぱの上でじっとしていることがあります。これらのカメムシは、ただまとめて産み付けられた卵から生まれてボーっとしていたから集まっているのではなく、集まることに意味があるから集まっていると考えられています。今回は、群れることの意味についてのお話です。
1. 蒸れるために群れる
生まれてすぐの幼虫が群れて暮らすミナミアオカメムシは、一齢の間は栄養を取らずに水分だけで二齢幼虫に進みます。その水分は、口器から吸うだけでなく、空気中からも取り込むことができます。空気中の湿度が下がると死亡率が上がるのですが、低湿度条件下でも集団サイズが大きいと生存率が上がります。また、集団サイズが大きいほど個体の水分喪失は少ないです。このことから、集団でいることが水分の保持に寄与し、一齢幼虫の生存率を上げるものと考えられています。若齢の間は集合性があるミナミアオカメムシも、齢が進み、植物からの吸汁量が多くなると餌の取り合いになってしまうため、分散するようになります。
2. 集団で消化酵素を入れて吸汁する
Oncopeltus fasciatusというナガカメムシの一種は、ミルクウィードと呼ばれる植物の実を吸います。集団で吸汁することにより、タンパク質分解酵素をはじめとする消化酵素を大量に植物に送り込みます。複数匹の消化酵素を合わせることで、効率よく吸汁しているものと考えられています。
3. みんなで狩りをする
ヨコヅナサシガメは昆虫を捕食するサシガメの仲間で、大型の昆虫を集団で捕食することが知られています。一匹では倒せない獲物でも、複数匹でかかれば倒すことができるため、日頃から群れていると考えられています。
4. 自分が食べられる確率を下げる
ホオズキカメムシは、大型草食動物や魚などの群れと同様に、複数匹で集まることにより捕食者に自分が狙われる可能性を低くしているのではないかと考えられています。集団でいるほうが、1匹でいるよりも捕食者に見つかりやすくはなります。しかし、例えば10匹集まって1匹で居るときより10倍以上捕食者に発見されるようであれば、単独行動よりも集団でいることが危険になりますが、実際には発見率は群れの匹数が増えてもそれほど増えないため、集団で居るほうが自分が狙われる可能性が低くなります。
5. 集まって暖を取る
冬場に、人家で大量のカメムシがかたまって越冬しているのを見つけることがあります。昆虫は恒温動物ではありませんが、呼吸をするため、僅かな熱や湿気がでます。集まることによって、暖かさと湿気のある環境を得られると考えられています。
[参考文献]
藤崎憲治.(2009)カメムシはなぜ群れる? 離合集散の生態学. 京都大学学術出版会