イワダヌキ(岩狸)というちょっと変わった名前の動物をご存知でしょうか。和名からは、岩の上にいるタヌキのような可愛らしい生き物を想像するかもしれませんが、英名では、ハイラックスというどことなくカッコいい名前がつけられています。今回は、イワダヌキという動物についてのお話です。
イワダヌキとは?
イワダヌキ目 Hyracoidea イワダヌキ科 Procaviidae に属する動物を指し、イワダヌキ目に属する現存する科はイワダヌキ科のみであり、種は4種ほどしかいません。また、イワダヌキ属 Procavia に属する種はケープハイラックス Procavia capensis の1種のみです。本種はアフリカ大陸と中東に住んでいます。体重は2〜5キロほどでタヌキを少し小さくしたような大きさですが、しっぽは短く、小さな牙も持っており、近くでみると全く異なった雰囲気があります。
イワダヌキの近縁種
イワダヌキは和名ではタヌキとつけられていますが、過去にはネズミの仲間であると考えられ、1760年頃にはモルモットと同じCavia属に入れられていました。しかし、歯や足の形態的特徴から、ゾウやジュゴンと近縁であることが立証され、その後のDNA解析によってもその予測が支持されました。
小型であることや、見た目の雰囲気からゾウやジュゴンに近いと言われてもあまりピンとこないかもしれません。しかし、過去には600-1300kgぐらいあると推定されるような巨大な種もいたようです。イワダヌキ目の動物は3700万年前に現れて以来、多数の科や属、種が出現し広く分布しましたが、その多くが絶滅してしまいました。
現存するイワダヌキの仲間もツメの形や聴力の良さ、敏感な肉球、牙など、ゾウと共通する特徴を持っていると言われています。
イワダヌキの生態
イワダヌキと言われるだけあり、急な岩場に好んで生息し、危険を感じると岩場の隙間に隠れます。一頭のオスを中心として数頭から種によっては数百頭ほどの群れで生活します。ケープハイラックスでは、20種類以上の音と声で仲間とコミュニケーションを取ることが報告されています。一方、樹上で単独で生活する種もいます。いずれも、植物の葉、草などを食べます。一対の小さな牙は、オス同士の喧嘩の際に使用します。
体温調節が苦手なため、よく複数頭で集まって日光浴をしたり日陰で体を冷やしたりします。足の裏は分泌物により常に湿っており、険しい岩場で滑りにくくするのに役立っていると考えられています。