なんとノミは寄生性のシリアゲムシ

2023年7月22日 生物

前回、ノミの生態についてお話しました。今回は、ノミがどのようにして動物に寄生する昆虫に進化したのかについてお話したいと思います。

ノミは意外と新しい昆虫

ネコノミ

ネコノミ

完全変態の昆虫(蛹になる昆虫)は進化的に比較的新しいグールプで、ノミ目 Siphonaptera もその一つです。卵から生まれた幼虫はイモムシのような形をしており、蛹の期間を経て成虫になります。DNAによる系統解析によると、シリアゲムシ目 Mecoptera の一部のグループがノミ目であることが分かっています(シリアゲムシ目は側系統群ということになります)。

シリアゲムシ

シリアゲムシ sp.

シリアゲムシの仲間には翅がありますが、ノミには翅がありません。ノミは翅を落として寄生に特化したシリアゲムシの仲間といえます。シリアゲムシは1.5cmほどの大きさがあり、翅もあるためノミと一見全く異なった生き物に見えますが、他の昆虫を含めた動物を餌としている点は同じです。シリアゲムシは長い口吻を持っており、その口吻を昆虫に突き刺して体液を吸います。

シリアゲムシ

シリアゲムシ sp.:長い口吻が確認できる。

つまり、ノミは吸汁・吸血先を昆虫から恒温動物に変えたシリアゲムシと考えることができます。獲物(吸汁・吸血先)の大型化に伴い、獲物を捕殺するのではなく獲物に寄生するようになり、体サイズについては獲物からの捕殺(サルのノミ取りなど)から逃れるためにむしろ小さくなったというのは興味深い進化です。

動物の体表を高速で這いずり回るノミ

ノミといえばジャンプで移動するイメージがあるかもしれませんが、動物の体表面にいるノミは、寄主に見つかると素早く扁平な体をくねらせて横向きに移動し、体毛の中に潜り込むような行動を取ります。迂闊にすぐにジャンプしてしまうと、寄主から離れてしまうことになります。そのため、できるだけ寄主の体にとどまろうと体を這い回りますが、逃げ切れそうにないと察するとジャンプして逃げます。なお、ノミがジャンプすると体が小さく跳躍距離も長いため、後を追うのは非常に困難です。寄主の体表で暮らすためには、高速に逃げ回る能力と、ある程度の圧迫にも耐えられる丈夫さが要求されると考えられます。前回お話したように、イモムシ姿の幼虫はノミの成虫の糞を食べるにも関わらず寄主から離れて成長します。寄主から離れてしまうことは、成虫になった際に寄主に取り付けなくなるリスクを伴います。しかし成虫ほども寄主からの攻撃を交わすための機能(高い移動能力と強度のある体)を持たないと考えらる幼虫は、寄主から離れたところで育たざる負えないのかもしれません。