見るも無惨なケヤマハンノキ
植物が一種の昆虫によりほとんど葉っぱがなくなるほど強度の食害に遭うことは珍しくありません。これまでも、ギシギシに発生したコガタルリハムシや、スモモに発生したモンクロシャチホコ、ケムリノキに発生したトサカフトメイガなどを紹介してきました。今回は、ケヤマハンノキに発生したハンノキハムシについてのお話です。
無惨な姿になったケヤマハンノキ
7月、滋賀県の二次林で、ケヤマハンノキの葉がボロボロになって茶色くなっていました。
よく見てみると黒い幼虫が大量に葉についていました。その木の下に停めておいた車は一日で幼虫の糞だらけ。一本の樹に少なくとも数千匹は居るように見受けられました。
ハンノキハムシとは?
ハンノキハムシ Agelastica coerulea は、甲虫目ハムシ科の昆虫です。国外では朝鮮半島、中国東北部、シベリア東部に分布し、国内では北海道から九州に生息します。成虫の大きさは、5-8mmほどです。成虫も幼虫も、ハンノキ属の葉を食べます。また、ヤナギ科やカバノキ科、ブナ科、バラ科などの葉も食べることが報告されています。幼虫が食べた跡は網目状になります。網目状にされた部分は茶色っぽく枯れます。成虫が食べた葉は穴が開きます。
ハンノキハムシは年一化で、6-7月頃幼虫が現れ、土中で蛹になり、8-9月頃に成虫になり、成虫の状態で越冬します。大量にハンノキハムシが発生した木では、ほとんどの葉が茶色くなるほどの被害をうけますが、発生が1-2年の場合は食害を受けたあとすぐに新しい葉が出て、木が枯れることはほとんどないと考えられています。一方で、長期に渡ってハンノキハムシが発生した場合はその食害に加えてカイガラムシが発生することがあり、弱り目にたたり目で枯死に至る例が報告されています。
ハンノキハムシの幼虫の移動
前方に3対の足があり、尾端には吸盤のような構造があります。移動するときは、尾端部分は移動させず、足をせわしなく動かして体の前方部のみ前に進め、体が伸び切ったところで尾端部分を持ち上げて一気に前に運びます。シャクトリムシと同じような動きです。この動きによって意外と早く移動することができます。