ネコの上品?な水の飲み方とイヌの豪快?な水の飲み方

2018年10月11日 ALL生物

ネコの水入れの周りはいつもきれいなのに、イヌの水入れの周りはいつも水浸しというのは、ネコもイヌも飼ったことがある人は、感じたことがあるかもしれません。ピチャピチャと静かに水を飲むネコとガボッガボッと激しく音を鳴らして水を飲むイヌ、実はネコとイヌは水を飲む時の舌の使い方が違うのです。

あまり深く考えたことがないかもしれませんが、イヌやネコには、人のようにコップを手でもって上から喉に流し入れることもできなければ、口に水をつけて吸い上げる能力もありません。お猿さんは、人と同じように水を飲めるみたいですが。

ペットボトルに入った水を飲むカニクイザル

それでは、どうやって器に入っている水を飲んでいるのでしょう。
まず、イヌやネコの舌は、人とは反対側、つまり裏側に曲げることができます。イヌやネコは、舌を裏側に曲げてお玉のように、水をすくい上げ、この時にできる水柱もろともパクっと口の中にいれると考えられてきました。ところが、2010年、ネコは、舌を裏側にまげているのは確かなのですが、舌をあまり水中深くに入れることはなく、水の表面張力によって舌と水面の間に水柱を作って口にいれていることが明らかになりました(Reis et al. 2010)。その翌年の研究で、イヌについてもお玉状にした舌の裏の水は、ほとんど口に運ぶ段階で下におちてしまい、結局、飲み込めているのは主に水柱になった水ではないかという研究報告が出ています(Cropmton & Musinsky 2011)。つまり、イヌもネコも水が口に入る原理は同じですが、イヌは、舌を水中深くまでいれ、早く引き出すため(つまり、水の飲み方が雑)水が飛び散りやすいという結論に至っているようです。動物の水の飲み方一つをとっても、研究することはまだまだたくさんあるようですね。

イヌ、ネコの水の飲み方

水を飲む犬の舌のスロー再生。Jの字に舌が曲がり、水柱ができているのがわかります。

ネコは、1秒間に4回ほどこの舌の出し入れを行い、イヌは1秒間に3回ほど行います。両者とも、人に比べて長い舌を持ち、かなり高速な舌の運動ができるようになっていることにより、コップを持ったり、液体を吸い込むことができない不器用さをカバーしています。

参考:
Reis, P. M., Jung, S., Aristoff, J. M., & Stocker, R. (2010). How Cats Lap: Water Uptake by Felis catus. Science, 330, 1231–1234. http://doi.org/10.1126/science.1195421
Crompton, A. W., & Musinsky, C. (2011). How dogs lap: ingestion and intraoral transport in Canis familiaris. Biology Letters. http://doi.org/10.1098/rsbl.2011.0336