大忙しのツバメの子育て

2019年6月27日 ALL生物
エサを求めるツバメの雛 photo by kebosebo [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons

前回は、ツバメが日本に来て、つがいになるまでのお話でした。今回は、つがいになった後の子育てから、南の島に戻るまでの生活についてお話します。

ツバメの子育て

ツバメの巣
ツバメの子育て期間は、約1ヶ月半です。1日1つずつ卵を生み、全部で5〜6個の卵を生みます。孵化する時期をあわせるため、はじめの数個を生んだ時点では、抱卵せず、産卵を初めて3,4日後に抱卵を開始します。抱卵している期間は、18日間で、孵化後も1週間ほどは、雛を保温するために、親鳥は巣の中にいることが多いです。抱卵や、雛を温めるのは、ほとんどメスの仕事で、オスは、メスに餌を運んで子育てを手伝います。餌となる昆虫は、羽蟻やハチの仲間、カゲロウの仲間が多いようです。雛がもっとも餌を多く食べる生後2週間頃は、1時間に20回も親鳥が餌を運んでくることもあり、非常に大忙しのようです。雛は、孵化後3週間ほどで飛べるようになります。

親鳥はどうやって雛に均等に餌をあげているのか

親鳥が餌を持って帰ってくるツバメの巣では、5~6個の大きな雛の口が待ち構えています。どの口がさっき食べたばかりの口で、どの口がお腹を空かせた口なのかを親鳥はどうやって判断しているのでしょうか。みなさんが、ツバメの巣の存在に気がつくのは、雛の賑やかな声を聞いた時であることが多いことと思います。ツバメの親は、この雛の声を使って一番お腹を空かせた雛を見分けているようです。ツバメの雛は、お腹が空けばすくほど早く鳴く傾向があり、親は、自分が巣に近づいたときに一番早く鳴いた雛に、餌を与えることが多いようです。また、お腹を空かせた雛は、他の雛を押しのけてどんどん巣の端っこにいく傾向があり、逆にお腹がいっぱいになった雛は、押されることを避けるために、真ん中の方へ移動していきます。そのため、親鳥は、端の方にいる早く鳴いた雛に優占的に餌を与えているようです。

同じ巣の中にいるツバメの子、でも、お父さんは・・・

ツバメ

Photo by Toshihiro Gamo from flickr

メスの浮気は、多くの生物種で見つかっていますが、ツバメも例外ではありません。全巣のうちの3割に、つがいのオスの子ではない雛が含まれており、その雛の割合は、調査した全雛のうちの15%になったという研究報告があります。オスは、できるだけメスが別のオスのところに行かないように見張っているようですが、メスは、空きを見て別のオスのところに行き交尾をします。ですが、あまりにオスの前から姿を消す頻度が高いと、オスも愛想をつかして餌を運んでこなくなることもあるようです。

ひと夏に2回行うこともある子育て

ツバメの巣

ツバメの雛 Photo by Toshihiro Gamo from flickr

4月にやってきたツバメは、1ヶ月半かけて子育てをし、余裕のあるつがいは、もう一度、子育てを開始します。2回目の産卵は、1回目のときよりは少ない4-5個の卵を生みます。2回子育てを行うつがいは、1回目の子育て時には、去年使った巣を修繕して使いますが、2回目の子育てのときは、5-7日かけて新しい巣を作ります。これは、連続で巣を使うと寄生虫が繁殖しやすくなるためだと考えられています。1回しか子育てをしないツバメは、1から巣を作ります。ちなみに、現在、ツバメの巣は人家などの人工物にしか作られず、自然物に作られたものが発見されることはないようです。

巣立った雛はどこへ行くの?

巣立ちの頃、巣の近くで雛が仲良く並んで電線にとまっている光景をしばしば目にしますが、その後、その周辺ではツバメをほとんど見かけなくなります。巣立った雛や、子育てを終えたツバメは、夜に集団を作って眠るようになります。ねぐらとして利用される場所は、河原のヨシ原であることが多く、夕方ごろに何万という大群となり、ヨシ原上空を飛び回った後、一斉にヨシ原に飛び込むように、入っていきます。ツバメ一羽は非常に小さいですが、それが何万と集まり一斉に飛ぶ光景は非常に迫力があります。9月の終わり頃には、ツバメのほとんどが、南の島に向けて移動し、ヨシ原でも姿を見られなくなります。

参考文献:北村 亘 (2015) 『ツバメの謎』 誠文堂新光社