田んぼに水が入り、カエルの鳴き声をよく聞く季節になりました。田んぼに囲まれたところに住んでいる人は、毎晩のようにカエルの鳴き声を聞きながら寝る日々だと思います。彼らはどうしてあれほども必死に鳴いているのでしょうか。今回は、そんなカエルの合唱についてのお話です。
大きな声でメスを呼ぶ
一部の種を除き、ほとんどのカエルの種について、鳴くのはオスだけです。オスのカエルの喉には、鳴嚢と呼ばれる音を反響させるための器官があり、その器官によってオスのカエルは、小さな体でも非常に大きな声で鳴くことができます。メスは、鳴嚢を持っていない種が多いです。カエルのオスが鳴く理由は、多くの生物と同様、メスを呼ぶためです。メスのカエルは、同種のカエルの声を聞いて、気に入ったカエルの近くにやってきます。
雨が降る直前に鳴くアマガエル
アマガエルは、よく、雨が降る前に鳴くと言われます。アマガエルが鳴いた次の日に雨が降る頻度が高いと報告している研究もあります。私は、田んぼに囲まれたところに住んでいましたが、急にアマガエルがケッケッケッケッと鳴き出したかと思うと、数十分後に雨が降ってきた、という経験は何度かあります。アマガエルは、気圧の変化、もしくは湿度が高くなるのを感じて、雨が来ることを察知しているのではないかと考えられています。なぜ、雨の直前に鳴くのかについては、よく分かっていません。雨が降る直前のタイミングに鳴くことによって、繁殖効率が上がることを示した研究報告があるわけではありません。また、体の表面が濡れると水に溶けた酸素の取り込みが皮膚からスムーズに行え、活発に動くことができるようになるという説がありますが、この仮説は検証されていませんし、仮に正しかったとしても、そのことが直ちに繁殖に良い影響を及ぼすことを示すものでもありません。
輪唱するアマガエル
カエルの歌が、聞こえてくるよ〜という歌をワンテンポずらしながらどんどん上から重ねて歌うという歌い方は、誰しも子供のときにやったことがあるのではないかと思われますが、実際にカエルも輪唱に近いことをしているようです。これも、アマガエルの研究ですが、隣にいるカエルの声に重ねて鳴いてしまうと、自分の声をメスに認知してもらいにくくなるため、わざと少し(数秒から数十秒)ずらして鳴くようです。しかし、隣のアマガエルが鳴いているときに、自分が鳴かないとメスを取られてしまうかもしれないため、休憩するタイミングと鳴くタイミング(数分単位)は近くのカエルと合わせるようです。他のカエルと合わせて同じようなタイミングで鳴きはするけれど、個々の声自体は少しだけずらすという方法で、カエルのオスは、自分をアピールするようです。
種によってはメスも鳴く
カエルは、ほとんどの種で、鳴くのはオスだけと先に書きましたが、メスが鳴く種もいます。ある研究によると、トノサマガエルは、メスも鳴くことができます。ですが、メスが鳴く場合は、オスとは、ちょうど反対の目的を持って鳴きます。オスは、メスを引きつけるために鳴くのですが、メスは、自分の卵巣の中に卵がない場合、つまり、繁殖することが出来ないときに、鳴きます。オスのトノサマガエルは、メスの声を聞くとそのメスから離れるように動きます。メスは、今卵を体の中に持っていないことをオスに鳴いて知らせることによって、オスからの無駄な求愛行動を回避していると考えられています。また、トノサマガエル以外のカエルでは、メス同士の縄張り争いのために鳴く種も知られているようです。