タヌキのお話2 ー外来種としてのタヌキー

2018年5月18日 ALL生物
Photo by kyu3 from フォト蔵(http://photozou.jp/user/top/124201)

先日、かわいらしいタヌキの森林生態系での役割についてお話しましたが、今日は、タヌキの外来種問題についてお話します。

タヌキNyctereutes procyonoidesはイヌ科タヌキ属に属する唯一の種であり、現在5亜種に分類されています(DNA解析から日本に生息するタヌキを固有種とする説もあります)。下記の図は、タヌキの自然分布(青)と外来種としての分布地域(赤)を示しています。

タヌキ分布図

自然分布は、東南アジアからロシア南部までと、高温な地域から比較的低温な地域まで分布しています。日本では、一般的に知られた動物ですが、世界的な分布域はキツネの仲間やアナグマの仲間と比べ小さく、また、タヌキ属の動物は世界で一種しか存在しないため、世界的には珍しい、極東にのみ生息する一属一種の動物です。しかし、毛皮用にロシアに持ち込まれたと思われるタヌキが、ヨーロッパの寒冷な地域から近年分布を拡大しています。

タヌキが侵入地域で昆虫や小型哺乳類を捕食することによる影響や、同じ餌資源を利用する、在来のアナグマやキツネなどの哺乳類に対する影響が懸念されています。タヌキは雑食性で食性の幅が広く、生息可能な温度域も広いです。それに加えて、人の居住区付近でも生活するなど、生息環境に柔軟に適応できる性質を持っています。これらの性質は、侵入地での定着を助けていると考えられます。

タヌキの糞

屋久島のタヌキのため糞場で見つかったカニの甲羅(白またはオレンジの破片)

また、タヌキは、国内外来種としても問題になっています。屋久島には、30年ほど前にタヌキが侵入し、近年では島全域で目撃されています。屋久島には絶滅危惧種であるアカウミガメやアオウミガメの産卵地がありますが、タヌキが、ウミガメの卵を掘り出して食べていることが確認されています。また、タヌキの糞からはカニの甲羅なども見つかっており、在来動物への影響が懸念されています。

屋久島のタヌキ

屋久島の森林に設置した自動撮影カメラに撮影されたタヌキ

本来の生息地では生態系の維持に貢献している生き物であっても、外来種となってしまうと、生態系の破壊者となってしまいます。動植物の不用意な移出入は避けるように努めなければなりません。