意外と知らないダニの生活史

2018年6月25日 ALL生物

今頃の季節になると、わんこにマダニがくっついているのを見つけて、こんなとこにも、あんなとこにも!と退治している方も多いのではないでしょうか。私も3、4日前に山にイヌを連れていったため、今朝から4匹も退治してきたところです。

ダニ

血を吸って満腹になり、うちの犬から離れたマダニ

今回は、みんなの嫌われ者、ダニについてのお話です。

人とダニの関わり

ダニといえば、おそらく私たちは真っ先にイエダニの仲間か、マダニの仲間のどちらかを想像すると思います。イエダニの場合は、ダニ本体というよりも、刺されて炎症をおこした皮膚、マダニなら、マダニ本体を想像することが多いのではないでしょうか。イエダニは、大きくても1mmほどの大きさにしかならないので、目で確認できることはあまりないのですが、マダニは、大きいものでは、3cmになるものもあり、容易に発見できます。これほど大型になるのは、ダニの中では、稀であり、ほとんどのダニは、1mm以下です。

世界には、2万種のダニがいると言われていますが、多くは、眼に見えないほど小さく、森林で落ち葉の分解をしたり、植物の中で暮らしていたりと、人とは直接関わりのない生活をしており、我々に影響を与えるものはほんの一部に過ぎません。ダニの中には、むしろ役に立ってくれているダニもいます。たとえば、私達の顔に、ほぼ100%棲みついているニキビダニは、顔や身体中の皮脂を食べて、お掃除をしてくれているようです。私達の知らないところで、私達はダニと共生関係にあるのです。

ダニに噛まれてしまった時の対処

一方、マダニは、近年ニュースにもなっているように、マダニが媒介する感染症によって、死者も出ているため、不快だけでは済まされない害があります。仕事柄、私は、ヒルにもダニにもよく食いつかれるのですが、感染症のリスクが高いのみならず、一度噛みつかれると、皮膚に強く張り付き、取り除くのが難しいため、圧倒的にヒルよりダニの方が噛まれたくありません。血を吸う前にすでに8ミリほどもあったマダニに吸い付かれたときは、引っ張っても頑なに剥がれず、痛いし、どうしたものかと絶望的な気持ちになります。ちなにみ、感染症を予防するには、ダニが病原菌を送り込むまでに時間がかかるので、食いつかれてからできるだけ早く取り除くのが良いです。ダニのとり方は、ワセリンを塗って窒息させつつ、口の根本をピンセットで挟んで捻るように抜く、とよく言われますが、私は、いまだかつて、ワセリンで獲物を諦めて、降参したダニに出会ったことがありませんし、ピンセットで挟んで捻るなんて痛みに耐えられたこともありません。ワセリンは、噛まれてすぐだと効き目が大きいそうです。火で炙るというのもやってみましたが、ダニは死んでもはなしてくれませんでした。結局、私は、いつも普通にピンセットで口元を摘んで引っ張って取っています。ダニは1週間ほどで勝手に取れますが、感染症のことを考えると、やはりどうにかして、早めに取る方が良いようです。しかし、慌てて無理に取ろうとして、ダニを圧迫すると身体の中の物が、人体に入ってしまうので、病気になるのが心配でしたら、病院に行くのが無難です。

ダニの一生も楽じゃない -ダニの生活史-

そんな噛まれるととても厄介なマダニですが、どうも、彼らも大変な生活をしているようです。

マダニの雌は、一生のうちで3回(雄は2回)も吸血しないと次の世代を残せないのですが、毎回、血を吸ったら地面に落ちるのです。森林や原っぱで脱皮をした後、再び草によじ登って両手を広げ、動物にくっつくチャンスを待ちます。ダニは、ヒルと違って移動能力が非常に低いため、獲物を追いかけることはほぼ不可能です。にも関わらず、3回も宿主に取り付かないといけないのですから、ずっと待ち続けたあげく、大抵は、志半ばで餓死していると考えられています。

餓死するダニ

森林内でダニを可視化したらこんな感じだろうか。多くのものは、ひたすら草の上で手を広げて獲物を待ち続け、そのうち餓死をしていると考えられている。

一生のうちで3回も獲物にくっつくことが出来た個体は、かなりの幸運の持ち主です。雌は一度に2000~3000個の卵を生むそうですから、生まれた子供が子孫を残せる確率は、1000〜1500匹のうち1匹ということになります。マダニは、イヌやヒトなど大型の哺乳類につくのは、ほとんどが成虫(3回目の吸血)の時です。つまり、私達やわんこにくっついたマダニは、およそ1/1000以下の確率で3回目の宿主をゲットしたマダニということになります。マダニにとってはラッキーなことかもしれませんが、私達にとってはアンラッキーですね。

 

ダニ

うちのアンラッキー犬にくっついたラッキーダニ