他人に頼って生きる植物たち

2018年7月7日 ALL生物

男なら誰もが憧れる生活、それはヒモ。実は植物の中にも、素敵なヒモ生活を送っているものが居ります。中には、もはや植物に見えないものも。。。今回は、「生きて子供さえ残せれば良いのです。」と言わんばかりの風変わりな植物たちをご紹介します。

寄生植物・菌従属栄養植物(腐生植物)とは?

寄生植物は、別の植物から栄養を得る植物のことを言います。菌従属栄養植物は、菌類に寄生して栄養を得ます。菌従属栄養植物は、かつては腐生植物と言われ、菌類を介して腐植などから栄養を得ていると考えられていましたが、生きた植物に共生する菌類から栄養を得ているものもあることがわかりました。そのため、腐生植物よりも菌従属栄養植物という用語が使われるようになってきました。寄生植物の一部の種や、菌従属栄養植物は、栄養分をすべて寄生した植物や菌類に頼ります。そのような植物は、自分で光合成を行い、栄養を得る必要がないため、葉緑体をもっていません。そのため、緑色ではありません。一般的な光合成を行う植物は、他の植物の陰にならないように、茎や幹を高いところまで伸ばして葉を広げ、できるだけ多くの太陽光を集め、葉にある葉緑体で光合成を行います。光合成によって得られた栄養を利用して、花を咲かせ、実をつけることによって次の世代を作ります。寄生植物や菌従属栄養植物は、栄養を自分で作る必要がないため、立派な茎や葉を作らず、花だけを作ることが多いため、一見植物に見えないような姿をしていることも珍しくありません。

寄生植物: ラフレシア

森のラフレシア
ラフレシアは、世界一大きな花として、日本でも有名な植物ですが、生育場所は、東南アジアの島々とマレー半島のみです。ラフレシアと聞くと、とにかく大きな赤い花を想像する方も多いと思いますが、茎も葉も知らない方が多いのではないでしょうか。それもそのはず、ラフレシアには、花しかないのです。ラフレシアは、ブドウ科の植物に寄生して栄養を得て、2年ほどかけて大きな花を咲かせます。花の寿命は数日だけです。花は、トイレの臭いと形容される、くさい臭いを出し、ハエを呼びます。私は以前、自生するラフレシアの臭いを嗅いでみたことがありますが、それほど強い臭いとは感じませんでした。それでも、大きなハエがブンブンたかっていました。ラフレシアに寄生されたブドウの木の周辺には、通常多数のラフレシアの蕾がポコポコと見つかります。

咲く寸前のラフレシア

茶色の皮が剥け、咲く寸前のラフレシア(手前)と枯れて黒くなったラフレシア(奥)

ラフレシアの蕾

木の根から出るラフレシアの蕾

咲いている期間が短いため、ちょうど咲いているものが見つかることは少ないです。ボルネオ島では、山の中でも見つかりますが、民家の庭に植えられたブドウ科の木の根本から出ていることもあります。

民家のラフレシア

ボルネオの民家の庭で咲いたラフレシア、直径60cmほど。

原生林でなくても生育はできるようですが、宿主となる木が少ないのか、寄生に適した場所が少ないのかはわかりませんが、森林でも民家の近くでもそれほど高頻度では見つからないようです。

菌従属栄養植物: ギンリョウソウ

ギンリョウソウ
透明感のある白さは、まるで小さな幽霊のようです。森林で見かけて、キノコの仲間かと思われた方もいるかもしれません。ギンリョウソウはツツジ科ギンリョウソウ属の植物で、日本全土に分布し、4-8月に高さ10cmほどの花を咲かせます。私は、よくスギ林で見かけますが、広葉樹林でも針葉樹林でも生えるようです。このギンリョウソウも、緑色の茎や葉はなく、ベニタケ属やチチタケ属などの菌類から栄養を得ています。普通の花と同じように蜜を出し、マルハナバチが訪花するようです。

ギンリョウソウの花の中

柱頭は紫色。写真のものはまだ雄しべが未熟ですが、黄色い花粉を出すようです。

最近の研究で、これらの種子は、モリチャバネゴキブリやカマドウマ類が食べ、散布していることが明らかになっています。ゴキブリやバッタによって種子散布される植物は非常に珍しいようです。散布された種は、発芽のときに必要な栄養すら菌に頼って行うようです。