イモムシの知られざる技

2018年7月14日 ALL生物

枝だと思って掴んだ棒が、フニャッとして、大いに驚いたことありませんか。僕は松の木に木登りしているときに、握りしめてしまいました、シャクトリムシ。幸い、相手さんも命に別状はなく、僕も驚いて木から落ちるということもなく、事なきを得ました。

今回は、シャクトリムシの仲間であるトビモンオオエダシャクという生き物についてです。この生き物は、敵から逃れるために3つの技を持っています。

まずは、見た目から。

トビモンオオエダシャク

成長すると7.8cmはあるのですが、なんとも可愛らしい猫耳がついています。

食草は、クヌギ、エノキ、サクラ、カエデ、リンゴ、チャなど幅広く、ツバキの葉に大発生することもあります。発生時期は初夏から秋で数ヶ月に渡って幼虫の状態で過ごします。

彼らの特技、まず一つ目は、その移動方法です。一般的なシャクトリムシと同じように、体を曲げながら動くので、足は前と後ろにしかついていません。意外なほど早く移動できます。手に乗せると後ろの足は結構強い握力で掴まれている感覚があります。移動が早いと彼らの天敵のアリなどに囲われる前に逃げることができます。また、少し離れたところにも体を伸ばして掴まれば簡単に移動できるので、美味しい葉っぱのあるところも探しやすくなるかもしれません。

トビモンオオエダシャク2

Photo by monroe from フォト蔵

二つ目は、擬態です。ピンと体を伸ばして、微動だにしません。まるで一本の枝のように見えます。イラガなどのように毒の針ももっていない彼らは、巧妙に隠れることによって、鳥に捕食されないようにしています。

三つ目は、香水造りです。彼らの天敵、アリは、化学物質を感知して、つまり匂いもしくは味を触覚で感知して、食べ物を認識しています。トビモンオオエダシャクは、食べている植物の匂いと同じ匂いのする物質を体にまとうことによってアリに植物の枝だと勘違いさせます。見た目も匂いも擬態できるのです。彼らは、少なくともサクラの香水と、ツバキの香水を作れることがわかっているようです。アリが感じる匂いと人が感じる匂いは全く同じではないので、私達が匂っても、サクラやツバキの匂いとは認識できないかもしれません。そもそも彼らが似せているのは幹の匂いなので、仮に我々人間が認識できたとしても、そんなに香しい匂いではないでしょう。

トビモンオオエダシャク

Photo by Shipher Wu from Flickr

ちなみに、こどものときは、かわいい猫耳芋虫、おとなになるとこうなります。。。

参考文献: 森昭彦 SB Creative (2014) イモムシのふしぎ