夏の嫌われ者といえば、蚊。小さい体が私達にもたらす被害は、精神的にも身体的にも絶大。今回は、夏の宿敵、蚊についてのお話です。
この記事の目次
蚊の種類
日本で最も一般的に見られる吸血性の蚊は、アカイエカとヒトスジシマカ(通称: ヤブ蚊)です。アカイエカは夜間に活動し、ヒトスジシマカは日中に活動します。全身が茶色っぽいのがアカイエカ、黒と白のまだら模様がヒトスジシマカです。両種は、全く違う姿をしているので、ほんのちょっと注意して見ると、簡単に見分けられます。ヒトスジシマカの方がアカイエカより刺されると痒いと一般的に言われますが、私はヒトスジシマカに刺される機会が多いせいか、あまり刺されないアカイエカの方が痒く感じた経験が多いです。夜間の屋内で、寝ている間にアカイエカに刺されることが多い人の方が多いため、アカイエカの方が痒くないといわれるのかもしれません。
蚊の生活史
蚊の寿命は、一ヶ月半から2ヶ月ほどです。蚊は卵、幼虫、蛹、成虫と変態する完全変態の昆虫です。
卵
血を吸ったメスの蚊は4−5日ほどで100〜300個くらいの卵を水面付近に生みます。卵舟 <らんしゅう>(約100個の卵の塊)の形で水面に産卵する種や、一つずつに浮袋がついている卵を生む種、水面の少し上に産卵し、水面が上がった時だけ卵が水に浸って孵化する種など、蚊の産卵様式は種によって様々ですが、水の近くに生むという点は一致しています。
幼虫(ボウフラ)
卵は2~5日で孵化し、幼虫(ボウフラ)になります。ボウフラは微生物や、生物由来の有機物(生物から脱離した皮膚片や死骸の破片など)を食べます。1週間から2週間くらいかけて3回脱皮をし、4齢まで成長します。
蛹(オニボウフラ)
ボウフラが4齢になると蛹(オニボウフラ)になります。蛹と言えば蝶のように動かないものと想像する人も多いかもしれませんが、蚊の蛹は泳ぎ回り、追い回すと、逃げ回ります。ボウフラと何が違うのかというと一番大きな違いは何も食べないということでしょうか。オニボウフラの状態で3日ほどを過ごし、水面で脱皮し成虫になります。
成虫
成虫は1ヶ月ほど生きます。生きていくための栄養は花の蜜などで、オスもメスも吸います。交尾を終えたメスは、吸血行動を開始します。メスには、吸った蜜を貯めるための場所と血を貯めるための場所が分かれており、吸ったもののATPの濃度が高いものを血と判断しているようです。体の倍以上の重さの(大体2ミリグラムほど)血を2分ほどかけて吸うと満腹になります。血を吸い終わるとすぐさまその場から離れ近くに止まって、1時間ほどかけて水分のみをおしっことして排出し、4日後くらいに産卵します。この吸血、産卵のサイクルをメスは一生のうちに3〜4回ほど繰り返すと言われています。
どうして蚊に刺されると痒くなるの?
蚊に刺されて痒くなるのは、花粉症などと同様、アレルギー反応によるものです。つまり、わざわざ反応しなくても良い無害な物質に、体が反応してしまっているようです。蚊は血液凝固抑制物質などを唾液とともに注入するため、それに対して、体が異物として認識し、反応しているのです。アレルギー反応は、蚊に刺されるという経験を経て起こるようになるため、全く刺されたことのない人が初めて刺された時は、無反応のようです。
何回かの経験を経て、体が蚊の唾液を学習し始めると、まず、Tリンパ球(T細胞)やマクロファージなどの攻撃により炎症が起こり痒くなるようです。この反応には1~2日かかるようです。その後、更に多くの蚊に刺されるという経験を経ると、igE抗体が作られます。これにより、ヒスタミンやプロスタグランジンが分泌され、刺されてから3分もあれば痒くなり始めるようです。刺されて速攻痒くなり、1,2日後も痒い人は、どちらの免疫システムも働いてしまっていることになります。ちなみに刺されすぎると、今度は痒さを感じなくなるようです。今度は、体がいちいち反応しなくても良いものと学習するようです。実際に毎晩何百匹と蚊に噛まれるアフリカの人たちは、全く痒みを感じないようです。じゃあ、大量に噛まれてその境地に達したら幸せだ!と思う人もいるかもしれませんが、日本の場合、残念ながら蚊がいない冬の間に体はその学習を忘れてしまうため、夏の始めはどうしても痒くなるようです。私は子供の頃に毎日20箇所ほどヤブ蚊に毎日刺されていましたが、痒くなくなった経験はありません。その境地に達するには、かなりの修行が必要なようです。また、蚊は、様々な病気の媒介者になっていることからも、やはり、あまり刺されないにこしたことはありません。加齢により、免疫システムが衰えてくると、痒みをあまり感じなくなるとも言われているようです。次回は、どうすれば蚊に刺されにくくなるのかについて、お話したいと思います。