牙が顔面を貫通!? バビルサのふしぎ

2018年9月23日 ALL生物

バビルサ属の動物は、世界に3種おり、すべての種がインドネシアのスラウェシ島かその周辺の島に生息しています。見た目通り、イノシシ科の動物で雑食性です。バビルサという名前は、インドネシア語やマレー語では、バビが豚、ルサが鹿を表し、豚と鹿を交ぜたような生き物という意味のようです。なんといっても、おかしいのが牙。下顎の犬歯が上に伸びるだけでなく、上顎の犬歯までもが顔の皮膚を突き抜けて、上向きに伸びています。その牙は一生伸び続けます。

babirusa

from wikipedia

なぜこんな牙を持つのか、については、メスによる性選択説が強く指示されているようです。つまり、モテるから。バビルサのメスにとって、牙の長いオスがイケメンにみえるようです。孔雀の羽根の美しさなら私達にも理解できるのですが。。。孔雀のオス

孔雀の華美なオスの羽根も、生存に不利益をもたらせども、利益をもたらすものではありませんが、メスからモテるからという理由だけで、このように美しくなったと考えられています。

セイウチ

By U.S. Fish and Wildlife Service Headquarters

動物の牙の用途について、私達はややもすると、戦いの際に相手を傷つけるための武器だと考えがちですが、バビルサの牙は、相手と戦い続けるには脆すぎ、すぐに折れてしまうとも言われています。しかし、牙の長い個体がメスとよく交尾できる傾向が報告されております。相手の牙を折ることがオス同士の戦闘の目的ではないかと言われています。まさに、騎馬戦のような戦いですね。旗を取られてしまったバビルサのオスは、また、旗を取り戻すまで(牙が伸びてくるまで)、負け犬のサインをつけ続けることになってしまうようです。一度の失敗で、次のモテ期の到来まで何年も待ち続けないといけないとは、厳しい世界です。メスとしては、強いオスの印がはっきりしていて良いかもしれませんが。

この牙は一生のび続けるため、牙が刺さったバビルサの頭蓋骨が存在していますが、実際に、牙が刺さったことが致命傷になり死に至った個体がいるのかどうかは不明なようです。

バビルサの頭蓋骨

from wikipedia

上顎の牙の伸び方には、個体差があり、上の写真のように、内側に強くカールしながら伸びるものもあります。こういった個体の中には、牙が頭蓋骨に刺さってもなお伸び続けるものがあるようです。

このバビルサ、飼育は難しくないようですが、生息している森林の減少や現地の人のハンティングにより、野生下での個体数が減少し、3種すべてが、絶滅危惧Ⅱ類かⅠB類になっています。

ちなみにこの動物、一度見てみたいと思われる方もいるかもしれませんが、日本の動物園では飼育されていません。現在少なくとも、シンガポールの動物園には、展示されており、角のあるバビルサも見ることができます。