絶滅危惧種、ゴールデンハムスター

2018年9月27日 ALL生物

ゴールデンハムスターは、一般的なペットショップで見かけることが多く、日本人には、非常にポピュラーな動物ではないでしょうか。ペットショップのゲージの中で、おまんじゅうのように身体を丸め、眠そうに薄目をあけて鼻をヒクヒクさせたかと思うと、またすぐにおまんじゅうに戻るその姿は、ゆるキャラそのものです。実際、おっとりした性格の個体が多いようです。そんなゴールデンハムスター、野生下では残念ながら絶滅危惧種です。野外で捕獲され、飼育されるようになってまだ100年も経っていないため、ペットショップで見かけるゴールデンハムスターは野生種ほぼそのままの動物です。今回は、あまりゆるゆるしていられない状況にある野生動物、ゴールデンハムスターについてです。

どんな生き物なの?

ゴールデンハムスターは、齧歯目キヌゲネズミ科ゴールデンハムスター属に分類される生き物です。

キヌゲネズミ科の動物には、レミングやハタネズミが含まれ、ハタネズミは日本にも住んでいます。キヌゲネズミ科の動物は、全体的に、一般的に想像するネズミよりも、ずんぐりむっくりした体型に、短めの尻尾をもっているようです。ちなみに、キヌゲは漢字で絹毛と書くようです。柔らかい手触りは確かにシルクのようです。

ゴールデンハムスター属は、4種に分けられていますが、どの種も、中東周辺に小さな分布域をもっているようです。

どんな生活をしているの?

地下2メートル付近に穴を掘って生活しています。9メートルの穴が発見されたこともあるようです。

夜行性ですが、主な天敵も夜行性のフクロウであるため、天敵に見つからないようにするために夜行性になったというよりは、昼間の日光を避けるためではないかといわれているようです。

食べ物は、植物の果実や種子、昆虫などであり、雑食性です。頬袋に食べ物を詰め込んで巣穴に持ち帰るようです。

単独で生活し、他個体に対しては、攻撃的です。ペットとして飼育されているゴールデンハムスターも複数で飼育すると、激しく攻撃しあい、相手を殺してしまうこともあります。

どこに住んでいるの?

ゴールデンハムスターは、シリアとトルコの国境付近にのみ生息しており、生息範囲は20000km2以下と推定されています。ちょうど四国の大きさが19000km2ほどです。

シリアとトルコの国境はちょうど砂漠から低木が生え始める移行帯に位置し、非常に乾燥した場所ですが、月平均気温は、東京とそれほど大きな差はないようです。

ゴールデンハムスター生息地

衛星画像でみると、ハムスターの生息地がとても小さく、また、砂漠から木が生え始めるちょうど移行帯の部分であることがよくわかります。

シリアの街

シリアとトルコの国境付近の街。乾燥しており、山にも背の高い木は生えていないようです。

世界中のペットのゴールデンハムスターは、1匹の雌から!?

ゴールデンハムスターは、1839年にシリアで最初に記録され、その後、1930年にシリアで1匹の雌とその子供が捕獲されました。そのうちの数頭がロンドンに送られて繁殖が繰り返されました。現在世界中にペットとして親しまれているゴールデンハムスターの少なくとも母系統はすべて、1930年にシリアで取られた1匹の雌ハムスターの子孫であることが、DNA解析より明らかになっているようです。

ペットショップに行くと、毛が長いものや、黒い斑のはいったものや、オレンジ一色のものがいますが、全て品種改良によって作られた形質です。ゴールデンハムスターの野生種は、腹が白く、背中が茶色であり、ペットのゴールデンハムスターの最もポピュラーな配色と似ています。

ハムスター野生色

野生種の配色に近いゴールデンハムスター

絶滅危惧種、ゴールデンハムスター

日本では、ゴールデンハムスターはどこのペットショップに行っても、必ずと行っていいほど見つかるありふれた人気のペットですが、野生下では、生息範囲が四国の大きさほどしかなく、そこに生息している数も推定2500匹以下と言われており、絶滅危惧種Ⅱ類に分類されています。その限られた生息場所が、シリアとトルコの国境という軍事的に非常に不安定な場所であるということも影響しているのか、これほど有名な動物であるにも関わらず調査が十分行われていません。生息頭数や生息範囲については、あまり詳細なデータがありません。

またゴールデンハムスターは、農業地域に生息しているため、作物を荒らす害獣とみなされ、殺鼠剤によって駆除も行われています。生息場所も現地の人の土地利用のために減少しているようです。自然分布域での保全の取り組みはなかなか難しい状況にあるようです。

シリアの農村

シリアの綿畑の様子

捕獲記録も非常に少なく、1930年に捕獲され、ペットとして飼育されている系統以外には、1997年〜1999年に捕獲された19匹とシリアの大学で飼われていた3匹が繁殖用にドイツに送られているようです。野生での生息地に容易に研究者が入れないことは、ゴールデンハムスターの保全にとってあまり好ましい状況ではありませんが、人工飼育下で繁殖が容易に行える特徴があったことは、ゴールデンハムスターという種を保存するのに当たって好都合であると言えます。


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