ミミズの土の中での働きと海外のミミズ事情

2018年12月24日 ALL生物

ミミズは、畑を耕してくれる良い生き物だというイメージをもっている人が多いのではないでしょうか。ミミズがいる土地は良く作物が育つ土地だとよく言われます。ですが、具体的に何をしているのでしょうか。今回は、存在は知られているけど、何をしているのかよくわからないミミズについてのお話です。

ボルネオのミミズ

ミミズが土壌にもたらす効果

ミミズが土壌に影響をもたらす行動は主に2つあります。

1. 土壌を食べて糞をする

効果1: 植物が栄養を取り込みやすい土壌になる
ミミズは土壌に含まれる落ち葉や、枯れた根などの有機物を食べ、糞をします。その糞はミミズに食べられる前の有機物よりも微生物が分解しやすいため、有機物の分解が早く進み、その結果、植物が栄養を得やすい土壌が作られます。
効果2: 土壌の保水力と通水性を増加させる。
ミミズの糞は、小さな団子状になっています。ミミズが生息する土壌では、土壌全体が土の団子が集まったような状態(団粒構造)になります。水がその団子の隙間に入り込んで、保持されやすくなります。そのため、土壌の保水力が増すようです。また、水が団子の隙間を通ることができるため、適度な通水性も維持されます。

2. 穴を掘る。

この作用は、あまり知られていないかもしれませんが、ミミズが四方八方に穴を掘り巡らせることによって、土壌は、耕された状態になります。土壌に隙間ができることにより、空気が入ったり、植物の根が伸びるスペースができたりします。また、ミミズの穴によって適度に土中に空気が供給され、植物の成長にとって好適な土壌環境になるようです。

外来種としてのミミズ

日本では、もともとミミズがいない森林がほとんどないせいか、あまり問題になっていませんが、ミミズが環境を大きく変えるインパクトを持っているために、外来のミミズが森林の土壌環境を大きく変えてしまい、その森林の生態系が変わってしまうことがあるようです。
アメリカのある森林は、過去に氷河に埋もれていたため、最近までミミズが生息していなかったのですが、そこにヨーロッパのミミズが侵入しました。それまで、ミミズがいない森林では、腐葉土の分解がゆっくり起こっていたため、森林の地表には何年分もの腐葉土が分厚く溜まっていました。そこでゆっくりと芽を出し成長する植物が多くありました。しかし、ミミズが侵入して腐葉土をすばやく分解するようになってしまったため、それらの植物が育つことができなくなり、その森林の林床は、たった2種ほどの植物しか育たなくなってしまいました。その上にそれらの植物もシカに食べつくされてしまって、林床の90%の下層植生が無くなってしまった森林もあるようです。少なくともアメリカでは、外来のミミズの生態系へのインパクトが注目されています。

マレーシア、ボルネオ島にいるミミズ

ボルネオのミミズ

マレーシアのボルネオ島には、標高4000mを超すキナバル山という山があります。その山では、標高3000mを超えた森林にも、30cm以上ある特大サイズのミミズが生息しています。その上に、その特大サイズのミミズを食べるヒルまで生息しています。そのヒルは、ミミズをそのまま吸い込むように捕食します。雨の日に、登山道を歩いていると、そのミミズにはよく出会えるのですが、ヒルがミミズを食べるシーンともなれば、なかなかお目にかかることはできません。

ヒルがミミズを食べる様子

近くで見るとこんな感じ